小さな物語のつくり方

 星新一の愛弟子がショートショートの創作方法を公開する。ネタのだし方から、オチのパターンまで「ショートショート・ストーリー」の創作技法が詰まっています。

小さな物語のつくり方小さな物語のつくり方

 短編よりもさらに短い小説、400字詰め原稿用紙にして10枚ほどのショートショート(掌編小説とも)を得意とした星新一先生。その星師の創作方法を愛弟子が推測も交えて解説します。

 目次的には序破急にそった形で、ネタ(アイデア)の出し方から、オチ(サゲ)の付け方まで順を追って解説して行く。章(指南)ごとに弟子試験と称して創作練習問題を出したり、作例として新作ショートショート12編も掲載しています。

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ゲームシナリオのためのSF事典

 SF作品のネタとなる科学技術や、空想シナリオを事典形式にまとめたSFガイドブック。

ゲームシナリオのためのSF事典ゲームシナリオのためのSF事典 知っておきたい科学技術・宇宙・お約束110

 サイエンス・フィクション(空想科学小説)は、科学技術の知識だけでも大変なうえに、読者を納得させるだけの創造も加えなければなりません。10年単位で多くの作品を読み漁り、常に最新の科学情報を吸収し続けるジャンルになる。

 その膨大な時間とコストを短縮するため、先人先輩たちによるSF作品を書くためのガイダンスになっています。また、漫画・アニメ・映画・ラノベに出てくる科学的設定を、ちょっと調べるのにも役立つでしょう。

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マンガの脚本概論

 京都精華大学マンガ学科の講義をまとめた教科書。ストーリー重視のマンガ作成法です。

マンガの脚本概論マンガの脚本概論

 京都精華大学にマンガ学科ができて10年、今はマンガ学部にまでなっています。その10年間に『マンガを学問として教えることができるのか?』を試行錯誤しての集大成が「マンガの脚本概論」という教科書的な本になったといえる。

 序盤は「マンガとは何か」ということで、マンガ表現の移り変わりを1950~2000年代、つまり手塚治虫先生がコマ割り漫画を開発して以来の進歩を解説します。1ページを均等に12コマ区切りで始まり、新しい表現が開発されては読者のリテラシー(漫画の読み取り能力)が上がり、さらに新しい表現をとくり返していき、1980年代半ばをピークに新しい表現やジャンルより、シンプルで量産性の高い内向きにまとまった作品が徐々に増えていく。ちょうどジャンプが600万部越えをしていた時期が重なります。

 中盤以降は、CMを4コマに、短歌を2ページに、そして起承転結を考えた8ページストーリー漫画を作成する実践編です。プロになって10年間、ストーリーの暴走に悩まされた著者が、ネームの前にプロットをしっかり練る重要性を説く。形は箱書きの脚本のようなものから、ただの筋書きまで人それぞれ、作品の長さやジャンルによっても違います。しかし、ここで完成図をきちんとイメージできないとネームで詰まる、作画途中で悩む、飽きる、完成しないという無駄につながるということです。

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拷問の歴史

 時代ごとの拷問史と、それ専用に作られた拷問用具の解説書。

拷問の歴史拷問の歴史 (Truth In Fantasy55)

 まず、少しでも想像して読むと気分が悪くなります。少しずつ読んでも吐き気を抑えるのが大変でした。知らない方が幸せな禁書の類になるかと思う。大半は拷問についての淡々とした解説です。拷問具の使用方法などのテキストが主になっています。写真はもちろんありませんし、イラストも配慮した簡略なものになっている。

 それでも、映画・小説・漫画と『拷問シーン』のある作品はままあります。それに備えた客観的な資料としての拷問事典となるでしょう。

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ストーリーメーカー 創作のための物語論

 いくつかの物語論を紹介し、それを元にした30の質問に答えることで、ストーリーを創ることができるマニュアル本。

ストーリーメーカーストーリーメーカー 創作のための物語論 (アスキー新書 84)

 第1部が、物語論を書いた5冊の本の紹介です。5冊の概要と後の30質問につながる部分の解説になります。第2部がストーリーメーカー。極端な話、まったく構想がなくても30の質問に、好きなキャラクターのことでも埋めていけば物語のプロットができてしまいます。

 結局『行って帰る』に集約される。主人公が異世界、もしくは非日常なことに巻き込まれ、冒険、ないしはちょっと経験して、成長した姿で、日常の世界にもどる。これしか構造はなく、後はキャラクターや場面の要素を組み替えるだけになります。

 正確には、ハリウッドが全世界でまんべんなくヒットするために、世界中の民話や伝説を分析し、スターウォーズなどで実践した結果、この主人公の成長物語的な部分が共通してウケる。ということのようです。

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マンガの創り方 山本おさむ

 プロ漫画家による商業誌レベルのネーム・ストーリーのつくり方。

マンガの創り方マンガの創り方―誰も教えなかったプロのストーリーづくり

 まずは漫画作品を描いて、雑誌投稿や持ち込みをして、編集者に「今度からネームを持ってきて」といわれたレベルの漫画家の卵に向けた『ネームづくりの教科書』です。もしくはネームくらいは解って欲しいマンガ原作者志望に向けた、初心者お断りの中級以上のマンガ参考書になります。

 一般的な「マンガの描き方」にある作画パートをごっそり廃している。そして短編ストーリーの組み立てから実践的なネームづくりまでを、2つの作例(高橋留美子『Pの悲劇』/山本おさむ『UFOを見た日』)を使って説き明かします。漫画のストーリー・ネームの創り方だけで496ページもある大作です。

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「性愛」格差論―萌えとモテの間で

 『負け犬』をつくったエッセイストと、『ひきこもり』を世に広めた精神科医の対談集。おたく、腐女子、ヤンキーといった部族の現状を考察する。

「性愛」格差論「性愛」格差論―萌えとモテの間で (中公新書ラクレ)

 ほんとは(男の)おたくと腐女子の現状分析と今後どうなるのか?どうしたらよいのか?を対談で導き出したいようです。結論としては「性愛」によってつがいになろうよ。ということなのだろうけど理解できない。本田透の恋愛資本主義を意識しているようで、そこで生まれた格差によって追いつめられたおたくと、参加を拒否した腐女子が性愛、つまりエロ目的でつがいになるという、動物本能だよりな話です。それしか恋愛格差を超える可能性がないらしい。

 「恋愛」に失望したり恐怖した者がおたくや腐女子になるのだとしたら、字面を変えただけのような「性愛」で、趣味はそのままでイイよと云われたとしても、つがいにはなれないだろう。本田透の「妄想の世界で一生孤独に暮らせ」という主張も極端だけど、本能頼みのつがい推進もトキの繁殖並みに難しいと思う。

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ニーチェ 入門・哲学者シリーズ1

 中学生にも分かるようにやさしく書かれた哲学入門シリーズです。教科書ならプラトンあたりから始めるところをニーチェがトップバッターなところが興味を惹かれます。

ニーチェ:入門・哲学者シリーズ1ニーチェ―すべてを思い切るために:力への意志 (入門・哲学者シリーズ 1)

 「ソフィーの世界」が流行った頃、哲学に興味を持ちニーチェに共感したものの、その著作自体は難しくて全ては理解できなかった。そのニーチェの哲学を極めて整理された文章で150ページ以下にまとめて解説してくれるのはありがたい。

 ニーチェに共感する人は、いつも後ろ向きなマイナス思考で、常に心に穴が開いていて虚無感を懐いているようなタイプだと思う。それを突き詰めて考え理論化するとニヒリズム以下のニーチェ哲学に往き付くのだろう。でも、神やイデアはともかく「自我」を否定するのはツライ。自分の意思や思考といったものは幼稚な思い込みで、個々に湧いてくる感情や欲求を正当化するための虚構でしかないだなんて正気ではいられない。しかも「自殺」すらも永劫回帰では予定されていて救いにはならず無意味だ。いったい、それらを理解し全て受け入れる「超人」とやらはどんな振る舞いをするのだろう。


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エニアグラム 9つの性格分類

 エニアグラムとは性格の分類方法です。人は生まれながらにして、その人を活かす力・生き続ける原則を持っていて、その本質ともいうべき性格は9つあるというのです。

 血液や星座で分類されるよりはマシですが、まずは質問に答えなければなりません。数が多いほど好いようで、いくつかの本を読むと180問も答えればハッキリしてきます。ただ、正確を期するなら専門書や専門家に頼るほうが良いようです。

エニアグラム(Wikipedia)
エニアグラムによる性格タイプ無料診断テスト(エニアグラム研究所)

 よく的中しているので信じてしまう。でも、根拠がハッキリしないという問題がある。神秘的といえばよいのか、元はアフガニスタン地方の人類統治の秘法なのだそうです。人事を司る最高権力者のみに伝わる「口伝」だったそうで「死海文書」並の扱いができる話のようだ。

 ただ、それがヨーロッパに伝わりアメリカに渡って心理学のカウンセリングに取り入れるように研究されたことで、今の実用的な成果に結びつく。約10万人の調査と3万人の追跡調査をして、「人間の本質は例外なく9つの分類でき、その比率は9等分である」という結果だった。

9つの動機―自分のタイプを探り、他人の行動の心理を読む
9つの性格 エニアグラムで見つかる「本当の自分」と最良の人間関係 PHP文庫 (PHP文庫)
 エニアグラムの本はハードカバーも含めるとかなりの数が出版されています。90年代に「鈴木秀子」によって翻訳紹介されてからが始まりのようで、翻訳直後の学術的なものから、ビジネス書、お悩み相談的なものまである。新しいものほど優しくなっていますが、対象読者を限定しているので合わないと読み難い。ただ、全て9つに分類するのは共通です。

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岳飛伝 田中芳樹

 12世紀の中国、北方民族の国「金」の侵略をうける宋国。すでに北半分を奪われ中原をも失いつつある亡国の「宋」。そこに現れる抗金の英雄「岳飛」貧乏な母子家庭に育ちながら宋朝を救い領土を奪回するまで栄達する。そして奸臣の謀略によって非業の最後を遂げる。

※2003年からの「新書版」これ以前に中央公論新社から出版された岳飛伝(全4巻)「ハードカバー版」もある。
岳飛伝〈1〉青雲篇 (講談社ノベルス)
 
岳飛伝〈2〉烽火篇 (講談社ノベルス)
 
岳飛伝〈3〉風塵篇 (講談社ノベルス)
 
岳飛伝〈4〉悲曲篇 (講談社ノベルス)
 
岳飛伝 5 凱歌編 (講談社ノベルス)

※現在刊行中の「文庫版」
岳飛伝(一)<青雲篇> (講談社文庫)
 
岳飛伝 2 烽火篇 (2) (講談社文庫 た 56-32)
 
岳飛伝 3 風塵篇 (3) (講談社文庫 た 56-34)

 中国で「三国志」より人気があり、「アルスラーン戦記」の田中芳樹/編訳とくれば、かなりの期待を持って読み始めました。が、どうも寝食を忘れて夢中になって読破するというほどのめり込めません。もちろん田中芳樹の文章がつまらない訳がないし、魅力的なキャラもたくさん出ているし、読みにくい名前の登場人物がいっぱいいるのも中国モノのいつものことだし・・・なんでだろ?

 実は1年以上前に読み始めて1巻途中で挫折した。今回、再チャレンジして最後まで読んだ。つまりは「岳飛」というキャラが苦手なんです。完全無欠のヒーロー、三国志でいえば劉備と孔明と関羽を足したような完璧な人物。そして「精忠報国」の人生で、まさに中華思想の守護神。お笑い担当の牛皐(ぎゅうこう)や悪役の奸臣秦檜(しんかい)ですら親しみを感じるけど、完璧人間の主人公「岳飛」だけは感情移入できなかった。

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