ニーチェ 入門・哲学者シリーズ1

 中学生にも分かるようにやさしく書かれた哲学入門シリーズです。教科書ならプラトンあたりから始めるところをニーチェがトップバッターなところが興味を惹かれます。

ニーチェ:入門・哲学者シリーズ1ニーチェ―すべてを思い切るために:力への意志 (入門・哲学者シリーズ 1)

 「ソフィーの世界」が流行った頃、哲学に興味を持ちニーチェに共感したものの、その著作自体は難しくて全ては理解できなかった。そのニーチェの哲学を極めて整理された文章で150ページ以下にまとめて解説してくれるのはありがたい。

 ニーチェに共感する人は、いつも後ろ向きなマイナス思考で、常に心に穴が開いていて虚無感を懐いているようなタイプだと思う。それを突き詰めて考え理論化するとニヒリズム以下のニーチェ哲学に往き付くのだろう。でも、神やイデアはともかく「自我」を否定するのはツライ。自分の意思や思考といったものは幼稚な思い込みで、個々に湧いてくる感情や欲求を正当化するための虚構でしかないだなんて正気ではいられない。しかも「自殺」すらも永劫回帰では予定されていて救いにはならず無意味だ。いったい、それらを理解し全て受け入れる「超人」とやらはどんな振る舞いをするのだろう。


 あとがきに「ひとは見たい現実しか見ないものだ」というシーザーの口癖がのっている。かつて「人は猿から進化した」というダーウィンの進化論は受け入れられなかった。キリスト教関係者だけでなく、科学者ですら拒絶した。「人は特別な存在である」という夢をみていた人には受け入れがたい現実で、進化論が正しいと理解しても、感情的には受け入れなかったのだ。でも今、進化論を聞いて発狂しそうになって拒絶する人はいないだろう。「人が進歩したのか?」違う、当時は「人は特別な存在である」という記憶に反発して拒絶しただけで、その記憶が薄れた今はあっさり受け入れられる。もし、神やイデアなるものがあれば、世代を超えても拒否し続ける感情が湧いてもよいはずだ。いずれ「自我」に関する継続した意思や思考がまやかしであることも受け入れられる日が来るのかも知れない。

目次
なぜ道徳を否定するのか――まえがき p.3
第一章 ニヒリズム――すべての価値は無価値である p.9
 〈価値〉にかんする伝統的説明(一) p.12
 善悪のほんとうの起源 p.21
 神の誕生と死 p.28
 〈価値〉にかんする伝統的説明(二) p.33
 自我という「虚構」 p.39
第二章 永遠回帰 p.47
第三章 超人思想 p.65
 大いなる正午 p.66
 差異と消滅 p.72
 〈価値〉にかんする伝統的説明(三) p.79
第四章 力への意志 p.91
 主体なき意志 p.91
 〈力への意志〉の現代版 p.98
第五章 眺望固定病(パースペクティヴィズム) p.111
 誤謬の起源 p.112
 〈自我〉の構築 p.120
 円環の解決 p.130
あとがき p.141

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