ストーリーメーカー 創作のための物語論
いくつかの物語論を紹介し、それを元にした30の質問に答えることで、ストーリーを創ることができるマニュアル本。
ストーリーメーカー 創作のための物語論 (アスキー新書 84)
第1部が、物語論を書いた5冊の本の紹介です。5冊の概要と後の30質問につながる部分の解説になります。第2部がストーリーメーカー。極端な話、まったく構想がなくても30の質問に、好きなキャラクターのことでも埋めていけば物語のプロットができてしまいます。
結局『行って帰る』に集約される。主人公が異世界、もしくは非日常なことに巻き込まれ、冒険、ないしはちょっと経験して、成長した姿で、日常の世界にもどる。これしか構造はなく、後はキャラクターや場面の要素を組み替えるだけになります。
正確には、ハリウッドが全世界でまんべんなくヒットするために、世界中の民話や伝説を分析し、スターウォーズなどで実践した結果、この主人公の成長物語的な部分が共通してウケる。ということのようです。
宮崎駿作品も、この点は踏襲している。「なんだか凄いんだけど、ここで終わり?」という感想の『崖の上のポニョ』も解りやすく説明してくれる。『行って帰ってこない』ほんとは非日常で母親を乗り越える、親離れする所を『母性だいすき』で終わってしまう。観客が子供なら心地よい幕切れになる。
ただ、どうしても文章が嫌味だ。著作の宣伝というか、固有名詞を並べて自慢げに話す、鼻持ちならない学者肌という感じがする。記されている情報の質は良いだけに、余計な言い回しが不評を買って勿体ないと思います。
ISBN-13: 9784048674157
▼目次(ストーリーメーカー 創作のための物語論)
はじめに 人は機械のように物語ることができる p.3
物語の文法を習得するには
「物語る」という行為をソフトウェアに委ねる
「神話製作機械」というイメージ
「機械」を介して書くことの先に人の「固有性」は現れうる
あなた固有の「物語」を手に入れるために
もくじ p.18
第1部 創作のための五つの物語論 p.25
第1章 物語の基本中の基本は「行って帰る」である瀬田貞二『幼い子の文学』 p.26
ゲーム系ファンタジーの基本的なパターン
「日常」や「現実」の確かさを実感するプロセス
「行って帰る」文法に忠実な宮崎アニメ
「成年式」としての物語
「日常」と「非日常」の「境界線」を越える
第2章 物語を構成する最小単位とは何かウラジーミル・プロップ『昔話の形態学』 p.42
物語は単位の組み合わせで構成される
キャラクターには役割がある
8種類の登場人物
31の機能を解説する
欠如を回復するという構造
主人公の旅立ちと戦い
主人公の帰還
ロシア魔法民話の四つのテーゼ
第3章 英雄は誰を殺し大人になるのかオットー・ランク『英雄誕生の神話』 p.76
中上健次の試み
物語論的に未完の結末を予想する
世界中に存在する普遍的な物語
「貴種」の誕生と「母の死」
「流されたもの」としての属性
殺すべき「父」
物語論によって物語ることは可能か?
第4章 世界中の神話はたった一つの構造からなるジョセフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』 p.100
ハリウッド映画のストーリー開発
ストーリーまんがの起源
神話を心理学的に解説する
非日常への出立
大人へのイニシエーション
日常への帰還
英雄神話の基本構造
第5章 ハリウッド映画の物語論クリストファー・ホグラー『神話の法則』 p.146
構造は同一だけれど外見は全く異なる物語
物語という因果律
日本の物語は構造しかない?
グローバル化とまんが・アニメの変容
ハリウッド映画のマニュアルを検証する
ヒーローのフォーマット
第2部 ストーリーメーカー30の質問に答えてあなたの物語をつくる p.173
第1章 Q1~16 主人公の内的な領域を設計する p.174
Q1 あなたがこれから書こうとする物語のうち、頭の中に現状あるものをどのような形でもいいのでとりあえず書いて下さい。
Q2 Q1のプロットを一文で言い表すとどうなりますか。
Q3 あなたがこれから書こうとする物語の主人公について思いつくまま記して下さい。
Q4 あなたの主人公が現在抱えている問題を「主人公は×××が欠けている状態にある」という形で表現して下さい。欠けているものを具体的に書き、次にそれが何の『象徴』であるかを一言で記して下さい。
Q5 あなたの主人公の「現在」について設計し、一番イメージに合うものを以下のA~Dより選択して下さい。
Q6 A~Dの1つを選んだら、ログラインを「主人公は×××の状態で△△△を求めているが最後に□□□になる」といった程度のシンプルな文章を作ってみて下さい。これは主人公の内的な変化の定義です。
Q7 あなたの主人公の現在に影響を与えた「過去」について記入して下さい。
Q8 Q4の答えを踏まえて主人公が「欠けているもの」を手に入れるために誰かから与えられる、(あるいは自らこなさなくてはいけない)具体的な課題やミッション、クエストは何かを考えて下さい。
Q9 その外的な目的や課題を主人公が最終的に達成するか否かを決めましょう。
Q10 その結果象徴的に手に入れるもの、ないしは失うものは何でしょう。
Q11 主人公の目的達成を妨害する中心的キャラクター、「敵対者」は誰ですか。
Q12 主人公と敵対者の価値観や考え方はどう違いますか。
Q13 主人公の傍らにいて目的達成を助けるキャラクターは誰ですか。
Q14 主人公を助ける中心的キャラクターが主人公を助けるのは何故ですか。
Q15 主人公を庇護したり主人公が成功するポイントとなる力、アイテム、アイデア、知恵などを与えてくれるキャラクターは誰ですか。
Q16 主人公がQ15のキャラクターから援助を受けるのは何故でしょう。
column カードでプロットをつくる p.224
第2章 Q17~30 物語の構造を組み立てる p.226
Q17 主人公の生きている「日常世界」はどういう場所・環境ですか。
Q18 その日常に危機が迫っていることを予感させるできごとは何ですか。
Q19 その日常はどのように具体的に脅かされますか。
Q20 主人公に行動を起こさせるきっかけとなる「使者」「依頼者」は誰ですか。
Q21 主人公は行動を起こすことでためらったり、誰かにとめられます。そのくだりを必ずつくっておいて下さい。
Q22 主人公の行動に対して何かタブーを与えますか。
Q23 主人公が物語の中で到達する「日常」と最も離れた場所はどこですか。
Q24 主人公は、そこで直面した問題をどうやって解決し、その結果、主人公はどう変わりますか。
Q25 主人公が目的を達成するために失ったものは何ですか。
Q26 敵対者と直接、対峙した時、主人公は敵対者を理解しますか。和解したり、赦すことは。赦せないとしたら何故、どこが。
Q27 この物語の結末において主人公の生きる環境はどう変わりますか。
Q28 これまでの回答をもとにストーリーをグラフの各項目に書き込んでまとめて下さい。
Q29 以上を踏まえてQ1で書きかけたプロットを第1部第5章のキャンベル/ホグラーの「ヒーローズ・ジャーニー」の12のプロセスに当てはめて整理して下さい。
Q30 もう1回、あなたのつくった物語を一言でまとめてみて下さい。
あとがき p.260
巻末付録 書き込み式「ストーリーメーカー」 p.271↑
奥付 p.272
◆マンガの創り方 山本おさむ
◆マンガ編集者が語るおもしろさの創り方
◆星山博之のアニメシナリオ教室
◆物語の体操 大塚英志