プロの現場で使えるパース講座

 現役マンガ家による、漫画背景のためのパース講座。

プロの現場で使えるパース講座プロの現場で使えるパース講座

 正確なパースで描いても、連載漫画のような背景にはならない。そのプロの「感覚」に依るところを「才能」や「描く量」が足りないと切り捨てることなく、技術として伝えようという良書です。

 一応、1~3点透視図法から解説されているので、初心者でも読み解くことはできます。ただ、パースを使って背景を描いて『違和感』を持った経験がある方が、より納得いくでしょう。

 1~3点透視図法の解説が難しく書かれている。そこは単純に「パース塾」の方がやさしい。しかし、それはSTEP6以降の『カメラのレンズ効果』を説明するのに必要なのだと思う。この講座は前段の『建築パース』と、後段の『レンズからの映像』を一本道にして、漫画の画面(コマ)として解説しています。

 今までも著者がアニメーターの本で、「背景は奥行き圧縮(望遠)」「コックピット内はウソパース(広角)」とか、映像として魅せるために、パースだけでは説明できない画面の話がありました。それを漫画用に視線誘導や、キャラの心理効果をからめて解説しているのは画期的です。


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マンガの学校1 短編マンガの描き方

 16~32ページの投稿用短編マンガを完成させるために、ストーリー面を鍛えるトレーニングブックです。

短編マンガの描き方マンガの学校1 短編マンガの描き方

 第1章は短編マンガを分析します。特にメジャーな連載漫画とは違い制約があることを認識し、出来ること・出来ないことを明確にする。その上で4つのポイント(設定・ストーリー・キャラクター・エピソード)を鍛えつつ、実践で2ページ・16ページマンガを描きます。

 以降は4つのポイントの具体的な解説とトレーニングです。2章アイデア、設定を練る・3章ストーリー構成・4章魅力的なキャラクター・5章キャラが起つエピソード。巻末はキャラクターや設定作りに使うシートと、作例16ページ漫画になります。

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ロボットの上手な描き方

 巨大ロボットの描き方を、基礎的なデザインからカッコ良く魅せるテクニックまで、3人のメカデザインへのこだわりも含めて解説します。

ロボットの上手な描き方ロボットの上手な描き方 (漫画の教科書シリーズNo.06)

 人型の巨大ロボットに絞った描き方です。これまでメカモノCGなどで描く過程はありました。でも基礎デザインや、ロボットの描き方練習法といった、深いところまで解説されるのは初めてかと思う。

 第1章はロボットの2大デザイン、ヒーロー系とミリタリー系、つまりジャイアントロボ・グレンラガン系とガンダム系の2種類の描き分けを、基本ラインや上手く描くコツなど詳しく教えてくれます。

 2章はリアル系ロボットの様にメカっぽく仕上げる、パーツ細部の描き方・質感の表現を解説。3章は巨大ロボに必ずつくパース・遠近法について、最低限知っておいて欲しいことを学びます。

 4章は3人のカラーイラストCGの描き方をサラッと解説。使用ソフトはSAIとPhotoshopです。

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ペン画のすすめ

 ミリペンを使ったペン画の描き方で、初心者でも根気よく続ければ描ける方法を解説してくれます。

ペン画のすすめペン画のすすめ 線が織りなす懐かしい風景

 漫画に使うペン先はGペンや丸ペンといった浸けペンですが、こちらは0.05~0.2㎜のいわゆるミリペンです。少数ですが漫画でも、ファイブスター物語などはミリペンで描かれている。

 画材はケント紙にミリペン。風景画が主で、茅葺き屋根がある農村の風景が良く合っています。カケアミや、自然の不規則なモノを規則的に描くテクニックが紹介されている。この描画方法は草木、山といった複雑な物をコツコツ描くのが良く、長いストロークは厳禁。それこそ手首どころか、指先だけ動かして描くのがポイントになります。

 そう、タブレットでいえば、A6の小さいサイズに適した描画法です。筆圧による線の強弱、ペンの入り抜きを必要としないで描ける。『ペン慣れ』がどうも上手くいかない者としては、興味の惹かれる描き方です。

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鉛筆で描く スケッチから細密描写まで

 もっとも身近な画材『鉛筆』の理解しているつもりの基礎から、絵として魅せる応用まで丁寧に教えてくれます。「ペンで描く」とは画材の違いがあるだけで、対になるような内容です。建物・風景画がメインになっている。

鉛筆で描く鉛筆で描く―スケッチから細密描写まで

 水彩画、油絵、ペン画の著作があり、教師でもあるアーサー・グプティル氏が、それ以前に著していた鉛筆画の描き方についての本2冊をまとめた洋書の翻訳本となっています。おお元の原書は1922年というからかなりの古典です。

 今では見ることもない、ペインターのブラシツール中にある画材もでてきますが、基本の鉛筆画テクニックは生きています。原書のひとつが「鉛筆画ステップ・バイ・ステップ」とあって、パース講義や実践的なスケッチだけでなく、精神面を含めた練習法も指南しているところが教師らしいです。

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パース塾3 構図編

 初心者にパースの描き方をやさしく教えるパースの教科書「パース塾」の3冊目。パースを使った構図について具体的な作例を示して教えてくれます。

パース塾3パース塾3 構図編

 パース塾3の前半は1・2の復習、後半で漫画を描くときのように、構図を考えてパースを使い作画する講座になっている。黄金比やら白銀比まで出てくるこの段階は難しいのですが、あくまで初心者向け・やさしく教えることに徹底しています。そして「アイレベル・消失点・箱で描く」という基本は変わりません。

 パース塾シリーズは専門学校でも使っているほど好評です。というかパース塾1・2が講座で使う2年分のプリントをまとめたモノだそうです。当初、3は作画ドリルとの話もあったのが「+構図の話・作例集」に落ち着いたようだ。

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パースの描き方 おすすめ参考書

 最近増えてきたマンガ・イラスト向け、パースの描き方参考書をまとめてみます。

スーパーパースデッサンスーパーパースデッサン―キャラが立つ遠近法のすべて
 「スーパーマンガデッサンシリーズ」の1冊で、パースについての基本と、背景作画の実践例を数多く掲載しています。マンガやイラストに必要なパーステクニックを1冊によくまとめている。
スーパーパースデッサン詳細


パース塾パース塾―画力がメキメキUPする!いちばん簡単な遠近法講座 イラスト・漫画・風景画、すべて
 専門学校の講師が超初心者やパースに苦手意識を持つ人に、解りやすく丁寧に教えてくれる。これ以上、パースについてはやさしくならないと思います。
パース塾詳細

パース塾2 実践編パース塾 2 実践編―画力がメキメキUPする!いちばん簡単な遠近法講座 (2)
 1のおさらいとパースを使った背景作画の実践を学べます。一二三点透視は知っている人なら2からで良いと思う。
パース塾2 実践編詳細

パース塾3パース塾3 構図編
 1がパース初心者に解りやすく教える基本編、2が指示どおりにパースを使って描く実践編、3が自ら考えた場面(コマ)をパースによって実現する構図編です。
パース塾3 構図編詳細


パース!マンガでわかる遠近法パース!―マンガでわかる遠近法
 パースをマンガで説明してくれる洋書からの翻訳本。この中では一番上級者向けで、パースについて深く知識としてしっかり身につけたい人に好い。円パースまで教えてくれる良書だけど、そのぶん実践的な作例は少なめです。

▼まとめ
・とにかく解らない人は「パース塾1」。
・多少学んでいて1冊で済ませたいなら「スーパーパースデッサン」、でもやさしく学びたいなら「パース塾2」。
・時間をかけてもしっかり理解したいなら「パース!―マンガでわかる遠近法」です。

ペン画ノート

 美大生がペン画の技法や練習方法について、初心者向けにまとめたペン画練習ノートです。

ペン画ノートペン画ノート

 第1章に用具の説明からタッチなどペン線の表現まで、ペン画の基礎をまとめています。2章以降は明暗や色や質感の表現など、モチーフごとに具体的な作例で示している。用具の説明はGペンや丸ペン、Pilotインクや開明墨汁と今の漫画用具と同じです。中にはガラスペンや葦ペン・竹ペン・製図用ロットリングなど、今では見ない物もありますが、ただ網を使ったスパッタリングとか、ペン画の技法は変わっていない。

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漫々快々

 「快描教室」に続く、菅野博之先生のマンガ描き方講座です。投稿作品を添削して、陥りやすい失敗や、直した方が良くなるポイントを指摘します。漫画初心者のお悩み相談所のような構成になっている。

漫々快々漫々快々―みんなのマンガがもっとよくなる (Comickersテクニックブック)

 快描教室が漫画の描き方の「絵」に関することを中心にしていたのと違い、漫々快々はコマ割りや構成ストーリーといった他人に見てもらうことを意識しての描き方を解説している。特にマズイところを指摘されるだけでなく、どう直すかを絵で説明されているので解りやすいかと思います。


 あとがきに投稿作品の選定は「とんでもなく上手いか、とんでもなく下手か、とんでもなく変か」だったようです。それ以外は印象に残らない。そこそこ絵がきれいで、ありがちなキャラにストーリー、32ページを起承転結で無難にまとめている作品は、その他に埋もれてしまうそうだ。

 上手いはキープできればよいけど、ヘタウマの方向か絵柄の変化を求めてむしろ低下する。下手は上手くなるにつれその他に埋もれてしまう。変はヘンなところを見極め維持し活かすのが難しい。こういった「他と違う」ところはマンガテクニック書によって矯正されてしまうのが悲しい、と矛盾したあとがきになっています。

漫々快々の全文

パース塾2 実践編

 ながらく漫画向けのパースについての良書というのはありませんでしたが、「パース塾2」で決着しました。前書「パース塾」が基本を押さえた初心者向けの内容で好評だったようで、今度は「パース塾2実践編」としてより具体的なパースを使った背景の描き方を指南してくれます。

パース塾2 実践編パース塾 2 実践編―画力がメキメキUPする!いちばん簡単な遠近法講座 (2)

 著者/椎名見早子(「花とゆめ」から漫画家デビュー。アミューズメントメディア総合学院・マンガ科講師。)ということもあって、最も解りやすく簡単な「パース(遠近法)講座」を目指した結果できた参考書です。これがマスターできればアシスタントが務まるであろう「背景アシスタント養成講座」でもある。


 基本は「四角い箱」の積み重ね。そして天地がひっくり返っても「アイレベル」を常に意識して、「消失点」と「パースライン」は見極めねばなりません。あとは個別具体的な描き方の技術で、「ニ支点一点透視」とか「不等分割」は知っていれば便利です。

パース塾2 実践編の全文