マンガ編集者が語るおもしろさの創り方

 元小学館の編集者で「週刊少年サンデー」「ビックコミックオリジナル」などの創刊に加わり、「ビックコミック」「ちゃお」などの編集長を歴任した著者が、これから漫画家を目指す人たちに向けて優しく語る指南書です。

おもしろさの創り方マンガ編集者が語るおもしろさの創り方

 ページ数は140ページそこそこ、しかもページ下1/3は余白なので文章量は大したことありません。なのに目次が膨大な項目になっている。統一した理論を述べるというより、漫画を描く前、持込に来る前に注意して欲しいことを箇条書きにしている印象を受けます。

 忙しい編集者が持ち込み原稿を読んで、何度も基本や初歩的なこと繰り返し説明している。だったら本にするから学習してくださいということなのでしょう。編集者がどこを観て、漫画をどう判断しているのかが解ります。そしてストーリーに詰まったときのアドバイスなど、困ったらその項目を読むよう116ページに「この本の利用のしかた」が書いてある・・・ちょっと不親切です。でも素晴らしい助言がいっぱいあるので、自分なりに整理してまとめてみるのも良いかもしれません。

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実録!少年マガジン名作漫画編集奮闘記

 元週刊少年マガジン編集長の著者が、手塚治虫から週刊少年誌の創刊、漫画雑誌絶頂期から衰退期に入るまでの長い長い道のりを編集者の立場から解説しています。

実録!少年マガジン名作漫画編集奮闘記実録!少年マガジン名作漫画編集奮闘記

 500ページ以上にも及ぶ週刊少年誌の裏側の記録でもあるので、簡単には要約できない。ただ手塚治虫を後天的天才としたり、梶原一騎がアンチ手塚として登場し、今に続く主流であるとしたりするところは興味をひく。優秀な漫画編集者はサラリーマンというより、定期的な収入がある漫画原作者なんだと理解できる。それを徹底したのがマガジン流で、結構、漫画編集では主流派なんだろう。


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NHKプロフェッショナル 仕事の流儀

 プロジェクトXの後番組で、プロフェッショナル(専門家)という仕事人間について掘り下げます。プロジェクトXがチームの業績に対して、プロフェッショナルは個人の過去の業績を含め「今」の仕事ぶりを追っています。

NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(公式サイト)

 プロフェッショナルで紹介されるいろいろな職業の中から、漫画・アニメに関連したクリエーターの回をピックアップしときます。

漫画家・浦沢直樹(2007/01/18放送)

プロフェッショナル 漫画家 浦沢直樹 プロフェッショナル 仕事の流儀 漫画家 浦沢直樹の仕事心のままに、荒野を行け

 「漫画の神様が右手に降りてきて描いてくれる」という。神様や天からアイデアなどが降ってくるという凡人には一生訪れることはない感覚。「才能」と「努力」とおそらく「運」も必要な奇跡なんでしょう。「努力」と「根性」では辿り着けない領域です。


トークスペシャル:大野和士 浦沢直樹(2007/03/15放送):後半が漫画家「浦沢直樹」で、上記放送の未公開トーク。子供の頃から天才で、そんな人がとんでもない努力をしてもなお届かない雲上人の「手塚治虫」。努力すれば報われるのは才有る人のみ。

漫画編集者・原作者 長崎 尚志(2007/11/06放送):浦沢直樹を発掘し育てた編集者。独立してフリーの編集兼原作者。絵が描けないだけで、後はMAXの漫画の才能があるようにみえる。番組中、感覚的に「視線誘導」の説明をしていたのが面白い。

プロデューサー・鈴木敏夫(2006/04/06放送)

プロフェッショナル スタジオジブリ 鈴木敏夫 プロフェッショナル 仕事の流儀 スタジオジブリ 鈴木敏夫の仕事 自分は信じない 人を信じる

 アニメージュの編集だった頃に宮崎駿に出会い「風の谷のナウシカ」を創る。以来ジブリを起こしアニメプロデューサーをやっている。けど、ご本人はアニメには興味のなっかった人。そこがまた「宮さん」とのコンビが上手くいったとも思う。


映画監督・宮崎 駿(2007/03/27放送):「崖の上のポニョ」の創作過程です。これまでも多くのメイキング映像が撮られてきたけど、それはみなジブリスタジオ内の制作風景で絵コンテ以降の作業。しかしこれは絵コンテ以前のイメージボード描いたり、ぶっちゃけ遊んでいる様にみえる。「創作の原点」を探している貴重な映像です。

プロの原作者になる漫画原作のつくり方

漫画原作のつくり方プロの原作者になる漫画原作のつくり方

 若桜木 虔(作家)、すぎたとおる(漫画原作者)に3人の漫画原作者志望(?)のライターが質問する形式の座談会をまとめた本。一応、章ごとに目次がふってありますが雑談にちかく、まとまりのない内容になっています。

 まんが原作者インタビューズで漫画原作者には2種類あって、名前が出るだけで本が売れて実力もある大御所。週刊連載などで漫画家が資料集めやストーリーを考えている余裕がなくなって、ネーム以前の作業を手伝うアシスタント的な原作者。後者にはその分野の専門知識を提供するアドバイザーとストーリーを練って漫画家に伝える原作者に分かれることもあります。「漫画原作のつくり方」は後者のアシスタント的な原作者になる方法がメインで、「漫画原作」論的なことはほとんどありません。

 「漫画原作のつくり方」では専門知識を(最低3つは)持つよう勧めています。レベルはスポーツでいうと県大会出場くらいの知識と経験が必要ということで、野球漫画の原作者になりたければ甲子園出場はしていないといけなくなります。いっぽう「まんが原作者インタビューズ」に出てきた某マンガ雑誌編集者は「いらない」といっていました。むしろ連載をもたせるストーリーを書ける方が大事なようです。専門知識はないよりある方が良いに決まっていますが、麻雀や野球のような安定したジャンルでもない限り「流行」があるし、ひどいとヒット作1本に二番煎じ狙いの作品が数本で消えていくジャンルもある。


 この本で一貫していることは漫画原作者でやっていくなら「何でもする」という姿勢。知らない分野の依頼がきても「専門家」のふり して、あとでインターネットで調べまくって原稿書くのだそうです。もっといえば編集者、漫画家がダマせればそれで良いらしい。プロなら「ムリです」「(知らないから)できません」は口が裂けても言うなということでしょう。

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まんが原作者インタビューズ

まんが原作者インタビューズまんが原作者インタビューズ―ヒットストーリーはこう創られる!

 著名なマンガ原作者のインタビューを通して、「漫画」の原作者は具体的に何をしているのか?を探った本です。

 読んでみるとマンガ原作者は十人十色。めざしてなれるものではなく、たまたまハマる人だったという感じ。また寺島先生が言うように、若くしてめざすものでもなく漫画家になりたいけど絵が下手でダメだった人が、落ち着く先として自然なのかもしれない。

 竹熊先生は、マンガ原作者は週刊連載漫画家の負担を軽減するための「必要悪」としている。つまりネーム以前を手伝うアシスタントなわけだ。本当は「あしたのジョー」ように原作者と漫画家の相乗効果で名作が生まれることが望ましいでしょう。でも、今のところ人の繋がりの偶然でしか起きない自然現象な気がする。


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マンガ原稿料はなぜ安いのか?

マンガ原稿料はなぜ安いのか?マンガ原稿料はなぜ安いのか?―竹熊漫談

 漫画原稿料の話は最初だけで、あとはブログ「たけくまメモ」の1カテゴリをまとめたような漫画雑記になっています。ただし内容は濃いです。

 漫画原稿料については物価上昇に対して安く据え置かれたということです。1960年代は3千円/ページで今のお金で1万8千円くらい。1990年代のジャンプ新人が6千円/ページだったので1/3に据え置かれていたわけだ。さすがに今(2004~)は週刊少年誌であれば1万2千~は出るようです。ただし少女漫画は8千~とか、月刊誌でも作画密度の高いところ(角川など)は1万~になるとも聞くので、いまだに千画家・万画家という区分けができる。


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コミックパーク:絶版コミックを1冊から販売

 下記は絶版コミックを一冊からでもつくって届けるというサービスです。オンデマンド印刷のくるみ製本でおそらく卒業文集のような仕上がりかと思います。表紙カバーとカラーページは再現されません。

講談社「モーニング」25周年を記念して、
人気作品24タイトル232冊をコミックパークでオンデマンド復刊! キャンペーン仕様の特別装丁版は1年間の限定販売(2007年10月まで)です。 値段は変わらず1冊945円。この機会をお見逃しなく!
復刊24タイトル
● アクター 全14巻 かわぐち かいじ
● 宮本から君へ 全12巻 新井 英樹
● 大阪豆ゴハン 全12巻 サラ・イイネス
● 風とマンダラ 全4巻 立川 志加吾
● 鉄人ガンマ 全10巻 山本 康人
● 右曲がりのダンディー 全9巻 末松 正博
● 牛のおっぱい 全5巻 菅原 雅雪
● さばおり劇場 全2巻 いがらし みきお
● 気分は形而上 全19巻 須賀原 洋行
● 東周英雄伝 全3巻 鄭問
● 駅員ジョニー 全7巻 作・末田 雄一郎 画・高橋 のぼる
● ドトウの笹口組 全9巻 若林 健次
● ひまあり 全2巻 上野 顕太郎
● 名犬リンタロウ 全2巻 永松 潔
● ぶたいぬ 全3巻 さだやす 圭
● 大字・字・ばさら駐在所 全4巻 うえやま とち
● 天のテラス 全3巻 小椋 冬美
● 鉄魂道! 全2巻 安田 弘之
● ギャンブルレーサー 全39巻 田中 誠
● 万歳ハイウェイ 全13巻 オサム、守村 大
● BE FREE! 全12巻 江川 達也
● 代打屋トーゴー 全25巻 たかもち げん
● ヨリが跳ぶ 全20巻 ヒラマツ・ミノル
● 未成年  土田 世紀

さらば絶版!オンデマンド・コミック(漫画家森田崇BLOG★フラットランド):コミックパークのオンデマンド印刷本のレビュー。モノクロ漫画を印刷物からスキャンしたのでは画質が良くないようだ。せっかくのオンデマンド印刷機なのに・・

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手塚治虫と宮崎駿

日本アニメーションの力日本アニメーションの力―85年の歴史を貫く2つの軸

 たけくまメモ(津堅信之の『アニメーション学入門』)にてアニメ史研究家というので興味を持ち読んでみました。85年のアニメーション史をざっくり紹介しています。でもメインは「手塚治虫と宮崎駿の対立」です。

 宮崎監督の手塚批判は今までにも読んだことがありましたが、ダンマリを決め込んだ手塚先生の内心を周辺からの言葉で推測しています。黙りを始めたのが「風の谷のナウシカ」で完敗したからでは?というのが面白かった。負けず嫌いの神様らしいです。

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