中世ヨーロッパ入門

 多岐にわたって中世ヨーロッパ社会を紹介しています。王から農民までの支配制度、社会の隅々まで浸透したキリスト教、寝具・食器などの日用品から楽器まで幅広く写真で見ることができる。

中世ヨーロッパ入門中世ヨーロッパ入門 (「知」のビジュアル百科25)

 中世とは5~15世紀の間であり、ゲルマン諸部族の侵入でローマ帝国が崩壊してから、ペストで1/3が死に、キリスト教が弱体化してルネサンスが起こり、オスマン・トルコの侵攻により東方キリスト教ビザンチン帝国の首都コンスタンチノーブル陥落で終焉する。そして科学の振興と大航海時代を迎える。

 こうやって見るとヨーロッパはサクソン・フランク・ゴート人といったゲルマン諸部族に乗っ取られ、それらが城を築き土地盗り合戦を繰り返した挙句に、不衛生でインフラもメチャクチャなままペストの大流行をゆるした訳だ。平均寿命約30歳はどんなに無茶しても、何を食べても平気な世代を過ぎたら死んでるってことでしょう。ベルセルクの陰鬱で禍々しい世界観がぴったり当てはまる。そしてルネサンスを渇望したのも、ローマ時代の社会が衛生的で豊かで成熟していたからなのだろう。


中世ヨーロッパ入門(あすなろ書房>「知」のビジュアル百科)

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古城事典

 日本の城も2ページありますが、主に中世ヨーロッパの城図鑑です。ヨーロッパ各地域の城の違いや、城での生活について小物に至るまで写真で紹介されているのが参考になります。

古城事典古城事典 (「知」のビジュアル百科24)

 9~10世紀にバイキングなどの侵入から領地を防衛するために領主(王や小諸侯)が城を築き始めた。創めは木造の砦ていどのものだったが、石造りになると大規模に城塞化していった。14世紀ごろから火薬が発達していくにつれ防衛力は低下していったが、都市の施設として使われ続けた。18~19世紀に中世のシンボルとして見直され保存・再建されるようになる。

 ハッとしたのが城と宮殿(館)の違いです。城というとお姫様でも住んでいそうだが、ほんとは居住性が悪い。初期の軍事拠点としての城はともかく、よく物語になる都市化した中世の城は牢獄など他の用途に使われることがあったようだ。平時は街中にある館に住んだほうが暮らしやすいでしょう。


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中世ヨーロッパ騎士事典

 子供向けかと思いきや、大人が資料目的に観ていることが多い図鑑シリーズです。

中世ヨーロッパ騎士事典中世ヨーロッパ騎士事典 (「知」のビジュアル百科20)

 騎士の登場から凋落、戦時と平時の違いからファッションにいたる日常まで、写真で詳しく紹介しています。明日から「騎士」になれそうなくらいの図鑑です。

 ローマ帝国崩壊後、東からヨーロッパに馬に乗って侵入した蛮族。9世紀、その中で勢力を築いたカール大帝が代々騎馬の戦士たちに土地を与え騎兵を増やしたのが、騎士の始まりです。それから17世紀に、甲冑を貫く銃の発達と、必要な時に金で雇える職業兵士の増加によって騎士が凋落するまで騎士道が続きます。


中世ヨーロッパ騎士事典(あすなろ書房>「知」のビジュアル百科)

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武器の歴史図鑑

 子供向けの図鑑です。テーマにそった写真がメインのシリーズなので資料本に良いかと思います。

武器の歴史図鑑武器の歴史図鑑 (「知」のビジュアル百科19)

 武器の歴史といっても、人が身に付けるモノで古代の石器から西部開拓時代の銃(第1次大戦前くらい)までの紹介になる。それでもたいていの資料にはイラストか白黒写真しかない武器をカラー写真で見ることができるのは貴重です。

 細かい装飾や小物などはカラーで観て初めて質感が解る。ただ欲をいえば、中国系の武器がないのと日本刀をあっさり流しているのが残念で、もう少しページが多ければいいな、と思います。


武器の歴史図鑑(あすなろ書房>「知」のビジュアル百科)

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コスチューム 中世衣装カタログ

 中世ヨーロッパの王侯貴族から平民までの階級や職業別の衣装が、モノクロイラストによって解説されています。

コスチュームコスチューム―中世衣裳カタログ (Truth In Fantasy)

 カタログということで中世ヨーロッパをメインに古代やら遠い異国の衣装まで、風俗風習をまじえて広く浅く紹介されている。ファンタジーで中世ヨーロッパを舞台にするなら基礎知識として役立つでしょう。

 ただ写真は一切無く、衣装デザインの資料としてもパターン数が少ない。参考資料の一つとして活用するのが良いようです。あと、カバーイラストが山田章博ですが、表紙1枚だけで中身には関わっていません。


コスチューム(新紀元社)

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ファンタジー・ブックガイド

ファンタジー・ブックガイドファンタジー・ブックガイド

 インターネットが発達している時代にブックガイドに1800円+税というのもどうかな~と思いますが、読者目線のファンタジー作品紹介というのは意外に少ない。良いところは作品主体のガイドブックで、作品の雰囲気と世界設定が近いものをジャンル別につなげている。知っている好みの作品の前後をあたればヒットする確率は高くなる。

 ファンタジー作品の定義は曖昧でジャンル分けは難しく、児童向けのも入っています。メインの紹介は134作品、コラムや欄外も含めると400作品以上を扱っている。正直、もう少しあらすじを書いてくれないと判断できないよ~と感じましたが、著者コメントを読むと「粗筋をドーンと書いちゃダメ、ボツ!」になったそうです。読者の楽しみを奪う「ネタバレ」を避けつつ、面白そうだと思わせるように「あらすじ」をドーンと書くのがガイドなんじゃないだろうか?

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帝王列記 西洋編

 西洋における『国王』君主制について最古のハムラビから米国ケネディまで、帝王の伝記を通して王政の歴史を考察する読み物です。

帝王列記西洋編帝王列記 西洋編 Truth In Fantasy 38

 まず抜き出された王が多くないので、事典としては使えません。選択基準がインドより西から、アメリカまでの欧米。そして世襲の可能性を重視して米大統領のケネディ家がありつつ、ヒトラーは独裁者なので選ばれないとか。ヨーロッパに多大な影響があったのでチンギス・ハーンを挙げたりと、ちょっと変わった帝王のピックアップをしています。世襲によって安定した生涯を送った王ではなく、起伏の多い人生だった王たちの伝記集として感慨深く読めます。

 通して王制の物語です。家族→村→都市国家→文明国家と大きくなっても、家長が王になるのが自然で、文明発祥の地メソポタミアを統一したハムラビも当然王制だった。しかし、すぐローマ共和制が出てくる。文明を守り維持するなら君主制でも足りたが、より拡大し侵略し他よりも発展するには有能な軍司令官を選ぶ形での共和制(民主制)が有利だった。

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図解 クトゥルフ神話

 創作のためにつくられた架空の神話体系『クトゥルフ神話』。その膨大で複雑な物語を初心者向けに、要点を絞って図解するクトゥルフ神話の入門書です。

図解クトゥルフ神話図解 クトゥルフ神話 (F‐Files No.002)

 クトゥルフ神話は1920年代の米国で活躍した怪奇小説家『ハワード・フィリップス・ラヴクラフト』とその作家仲間で創造されました。お互いの作品に架空の暗黒神や魔術書など、固有名詞を出すお遊びが始まりです。作家ごとに独自の解釈、追加設定をして、さらに国境も越えて拡がり続けています。

 2ページ1テーマの構成で、異例の111テーマ+コラム3つと詰め込んでいる。章は、暗黒神・魔術書・著作に出てくる地名・人物紹介となっています。簡単に云うと、邪神復活、邪悪な暗黒神にまつわる物語がメインで、おどろおどろしい世界観です。

図解 クトゥルフ神話の全文

ロワール古城紀行

 フランスのロワール川流域に点在する古城の写真集。

ロワール古城紀行ロワール古城紀行

 パリのセーヌ川より南に位置するロワール地域は、昔からフランス王族たちを惹き付け数多くの城や館が建てられました。その62の古城を360ページに渡って写真をメインに紹介しています。定価2,100円なのにハードカバーで大きめの写真満載で、フランス王室の歴史、建築に関する解説も適度に載っていてお得感のある資料です。ただ、観光名所で特に有名な城については他の写真集でも、同じカットのものがあり、これは仕方ないことと思います。

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