遺言 岡田斗司夫

 ガイナックスの元社長「岡田斗司夫」が最後に語る「アニメ作品にとってのテーマとはなにか?」を探る大著です。

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 『遺言』というタイトルは、オタキング「岡田斗司夫」が最後に出す本だからと、アニメ制作の言わないようにしてきた裏側を語り尽くしています。新宿トーク居酒屋ロフト・プラスワンのイベントで6回、計20時間以上しゃべくりまくった内容を文章に起こしている。

 一応、時系列順に語られていて、大学生時代のSF大会「DAICON3オープニングアニメ」(1981年)制作で、山賀博之・赤井孝美・庵野秀明と出会ってから、ガイナックス設立『王立宇宙軍オネアミスの翼』『トップをねらえ!』~~~最終的には設定で関わる『トップをねらえ2!』(2004年)まで延々とあります。かなりの文量ですが、ガイナックスに興味があればスタッフ裏話を散りばめて、楽しく読めるように構成されている。

 「なぜ作品を創るのか?」「作品で伝えたいこと」「作品を作り続けるための核(コア)になる思想」すべてイコールのようで変化して行く『テーマ』話を本筋としています。


岡田斗司夫なう。特集 『ナディアの舞台裏』(『遺言』5章より)その(1) 「貞本義行監督案」が出るまで(オフィシャルブログ)
ヒーロー岡田斗司夫のすべて/島本和彦(筑摩書房):「遺言」推薦のことば

 かなりのオッサンホイホイ本で、長年ガイナックスに貢いで来たオタクには、懐かしく得心する裏事情が山盛りでした。ネタが多すぎて要約はあきらめて、個人的な最重要ポイントを。

 『トップをねらえ!』がスタッフの才能を結集した最高峰です。以降の作品はそのスタッフの引き算で、才能のバラ売りになっています。今、仮にその才能が集結できても、確執が表面化して作品にできないとのこと。

 確執の根底にある『オタク』に対する考え方の違い。オタクや中二病はモラトリアム期間であって卒業もしくは治すべきという思想と、オタクはマニアの延長線上で一生学び続ける求道者のようなものという考え。この「卒業」「求道者」はどちらが正解ということはなく並行し続けます。

 ただ、作り手側(監督)に前者の立場が多くては問題となる。TV版EVANGELION最終盤の実写パートに象徴される事象です。ラーメン食い終わって会計も済ませて「美味しかったよ」という客に、ラーメン屋のオヤジが「ラーメンは体に悪いから喰うなよ」と言い放つようなもの。それでも行列のできるラーメン屋なこと。

 後者の立場なオタキングが「もうアニメを作れない」とか悲しい。『トップをねらえ2!』のラストを修正できる裏設定や、山賀監督幻の最高傑作『ウィザード』が何で実現しないのか?イージーモードに入った監督たちに今後も好きにやらせて、どれだけついて行けるのか?力のあるプロデューサーの抑えは要るだろう。

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【岡田斗司夫の『遺言』第三章 YouTube動画】

ISBN-13: 9784480864055
▼目次(遺言 岡田斗司夫)
もくじ p.2-4
はじめに:岡田斗司夫 p.5-6

第1章すべてはDAICONから始まった:「DAICON FILM」と『王立宇宙軍~オネアミスの翼』 p.7
「テーマ」はなぜ必要か? p.8
すべてはSF大会からはじまった p.10
山賀博之、赤井孝美、庵野秀明との出会い p.12
復讐の『DAICON3』 p.16
「100パーセント本気」の作品を作ること p.20
すべてのシーンに意味がある『DAICON3』 p.23
「本気じゃない」実験作『愛國戦隊大日本』 p.29
黒色火薬も手作り p.33
メカも机もすべて紙製 p.36
真顔でやるパロディ『帰ってきたウルトラマン』 p.38
フィクションに感動してしまうということ p.44
手塚治虫の誘いを蹴る p.46
『DAICON4』:SFファンへの問いかけ p.48
「成功した後の自分たち」をぶち込む p.52
テーマは伝わらなくていい。迫力は伝わる p.58
『大正スター・ウォーズ』と『出稼ぎ巨人』 p.59
バンダイに3億6千万の企画を持ち込む p.63
プロトタイプ『王立宇宙軍』 p.65
リーダーに必要な「プロジェクトを私物化する」瞬間 p.69
「設定」はスタッフ全員でやる p.73
スポンサーとの軋轢 p.74
プロデューサーの覚悟と罪 p.77
宣伝会社の無茶すぎる注文 p.80
「映画を作るってどういうことなんだ?」 p.83

第2章「本物」の感動とは何か:『トップをねらえ!』で挑戦したこと p.87
アメリカ上映用の吹き替え版 p.88
『王立宇宙軍』収支 p.92
TV版『オネアミスの翼』(核実験あり) p.94
ファーストコンタクトものだった『オネアミス2』 p.97
主役を増やせば玩具も売れる! p.98
モビルスーツメーカー視点での『ガンダム』 p.100
「死の商人」にも生活がある p.103
『トップをねらえ!』はふざけているのか? p.105
アイディアの岡田・泣かせの山賀・情緒の庵野 p.116
「戦う理由」の重要性 p.119
主人公の頭を「あえて悪くする」 p.123
入らなかった背景設定 p.126
モノクロでこそ出せる「超科学」のイメージ p.129
オタクの肯定 p.132
本物だから感動する、わけではない! p.134
「そんな難しい事は岡田さんには出来ません」 p.136

第3章会社としてのガイナックス、歴史概観 p.139
「赤字覚悟で」なんて言うな! p.140
「丸投げ」で抜いたお金で借金を返す p.143
一生分悩んだ五年間 p.145
山賀・庵野・赤井:最強カードを使いこなす困難 p.150
「歴史的作品を作った」という呪い p.155
富野由悠季の才能は黒澤明の十倍 p.158
「教養」としておさえておくべき3タイプの作品 p.164
パソコンゲーム業界なら勝てる! p.168
アニメ業界とゲーム業界、評価基準のちがい p.171
レンタルビデオ店の仕入れ方法をリサーチ p.173
泥に手を突っ込む p.178
本人でさえ使いこなせない前田真宏の才能 p.182
秘密の進行企画『銀河空港』 p.184
『バリバリ伝説』はバイクがわかってない p.187
宮崎事件の衝撃 p.190
「下に実権が回ってこない!」 p.193
アニメ作品の権利は誰のものか? p.196
絵描きの資質、プロデューサーの資質、監督の資質 p.198
クーデターは起こされる方が悪い p.200
金食い虫『ナディア』 p.204
超荒療治で決着 p.206

第4章「新しいこと」と「作家の責任」 p.209
パソコンゲームに「綺麗なグラフィックを持ち込む」 p.210
三世代計画 p.214
本編よりスゴイ!付録の「日本史教科書」 p.219
核ミサイルも脱衣する p.223
世界初の育成シミュレーター『プリンセスメーカー』 p.227
「喪失の物語」が持つ感動 p.231
新しいことは出来る。でも、売れない p.236
『ヤマト』の誘いが来る p.238
富野由悠季のものすごいヘンさ p.243
「滅びゆく恐竜展」西崎義展 p.251
「プロデューサー絶対時代」から「作家主義」へ p.255
受け止められなかった「西崎義展」 p.260
「表現の自由」は20世紀後半の思想 p.262
強い人間の悪さ、良い人間のずるさ p.265
「納得できる価値観」をどう設定するか p.270

第5章プロデューサーの役割、クリエイターの仕事:ナディアの舞台裏 p.277
「貞本義行監督案」が出るまで p.278
国会で決められた「動画や撮影は韓国に発注せよ」 p.281
プロデューサーの作り方 p.285
「後半戦になったら生きてくる」キャラの置き方 p.288
悪の組織をマヌケにしないためには…… p.294
ブルーウォーターに込めるつもりだった設定とテーマ p.298
「矛盾点をなくす」よりも「心の温度の管理」 p.301
使われなかったエンディング p.308
神様は人間から勇気をもらっているのかもしれない p.310
プロデューサーではもうこれ以上はできない p.315
「岡田斗司夫最後の著作」 p.319
予算とスケジュールを二話目までで使い切る p.321

第6章「わたし」と「セカイ」の物語:物語とは何か p.325
なぜ宮崎勤が「俺たちの代表」なのか? p.326
いい女(男)はみんな「あっち側」にいる…… p.329
企画をこじらす山賀 p.332
山賀の(幻の)最高傑作『ウィザード』 p.335
「幻」しか見せられない p.339
「完璧なラスト」まで出来上がったのに…… p.344
実現率の低い「企画天国」 p.348
「岡田さんなら無理な要求をしてくれるでしょ?」 p.351
ロボットでやる時代劇『ベル銀伝』 p.354
ディズニーの地下 p.357
観客を否定してお金をもらってはいけない p.365
「世界をよくする」という責任 p.370
クリエイターは博徒である p.373

メイキング・オブ・『遺言』 p.377
『遺言』年表 p.382-390
『遺言』索引 p.398→392
奥付 p.400

星山博之のアニメシナリオ教室
ベストセラー・ライトノベルのしくみ
トップをねらえ2! 画コンテ集

▼過去のレビュー記事(ランダム表示)
▼コメント
genさん 2014/01/31 20:57 編集
ウチの母は、岡田斗司夫がアニメ作ってたと言っても信用してくれないです。
世間では文化人的な扱い・・・まぁ文化人で間違いないですけど、なんだかモヤモヤします。
さなだむし 2014/02/01 02:21
アニメ制作者にどんなイメージをいだいているのかワカリマセンが、体積が2倍以上だった頃のお写真を見せれば、我等のキングである!とご理解頂けるかと思う。
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