スクリーントーン百科
コミスタをいじっていると「ペン入れ」はアナログの時とぜんぜん違う。タブレットを使っている時点で、アナログのテクニックはほとんど役に立っていないと思う。
その一方で「スクリーントーン」はモアレが修正されるなどデジタルな特長はありつつ、アナログのテクニックが使えることが多い。それだけスクリーントーンを忠実に再現していることになる。そこでアナログのスクリーントーンについて勉強しなおす必要があると思った。
スクリーントーン百科/福留 朋之
コミッカーズの前身ともいえる雑誌MT(マンガテクニック)に載った記事を再編集したものです。スクリーントーンを初めて使った漫画家から、人気漫画家らのトーンの使い方や、アシスタントのスーパートーンテクニックまで載っています。10年前の本ですがなかなか貴重な情報が載っていると思う。
漫画を創った神様はスクリーントーンに懐疑的だった。「スクリーントーンに頼らずカケアミとか使って表現力をつけろ」みたいな風潮はちょっと前まで(今でも?)あった。
しかしスクリーントーンは登場して数年で漫画表現の主流になった。最大の理由はカケアミをするよりラクという、労力の節約と時間短縮なのだという。そして読者には白と黒だけの平面な漫画の世界に「濃淡」が加わり奥行きと色を想像できるようになった。象徴的なのが「グラデーションのある青い空に浮かぶ白い雲」厳密には白黒なのにそう見える。これをペンで手描きしたら地獄をみるとおもう。
スクリーントーン百科には他にも金属やガラスなどの材質や季節・天候・昼夜や車・銃などなど、いろんなトーンテクニックが載っています。あらためて見るとそんな所にまでトーンを使っていたのかと驚かされました。
ペン入れまではアナログで、後はスキャンしてデジタルでトーンを貼る。プロでもよく使われている手法なので、技術的には確立していると思う。それどころか無尽蔵にトーンが貼れて貼りなおしもでき、アナログなら手間がかかる作業も少ない労力でできるとなれば、新しい表現も出てくるのはないかと期待してしまう。あとは人がデジタルトーンテクニックを習得するのにどのくらい時間がかかるか?なのだろう。
個人的には士郎正宗先生がトーンの使い方を例によって細かく解説してくれているのが面白かった。材質<光源<視線誘導の順に優先度が上がっているようだ。
▼目次(スクリーントーン百科)
もくじ p.2
いがらしゆみこ p.4 /池上遼一 p.6 /江川達也 p.8 /桜沢エリカ p.10 /里中満智子 p.12 /士郎正宗 p.14 /ちばてつや p.16 /美内すずえ p.18 /望月峯太郎 p.20 (作家は五十音順で掲載)
トーンってなに? p.23
スクリーントーンの素材の秘密を探る p.24
スクリーントーン誕生秘話 p.26
スクリーントーンと漫画 永田竹丸 p.28
道具 p.30
トーン初心者への基礎知識 p.32
トーンを選ぶ p.32 /縮小 p.33 /はって切る p.34 /支持体 p.34 /保存 p.35
BASIC TONE TECHNIC(ベーシックトーンテクニック)
球を描く p.36
立方体を描く p.38
モアレ p.39 /はって重ねる p.40 /はってけずる p.41
SUPER TONE TECHNIC(スーパートーンテクニック) p.42
1.ビルの窓と壁と街燈 p.44
2.屋内を描く p.50
3.クルマを描く p.58
4.銃を描く p.68
5.鳥を描く p.76
6.水の動き p.78
コラム:基本のけずり4種 p.83
コラム:はりのテクニック p.83
7.雲の表情 p.86
コラム:イナズマトーンをつくる p.91
8.夜の街並み p.92
コラム:トーンフラッシュをつくる p.95
9.季節・天候・時間の変化を描く p.100
10.人物を描く p.108
スクリーントーンカタログ p.110-119
コラム:オリジナルトーンをつくる p.120
おくづけ p.123
福留朋之作画・編集
1956年鹿児島生まれ。高校卒業後上京。マンガ家のアシスタントとして、トーンを駆使したリアルな街景・背景を描く。現在はイラストレーションの仕事が多い。(1996年9/20発行当時)