デジタル世代のマンガ描き方ガイド
1ページもいいからマンガ原稿を完成させることを目的にしたガイドブック。儲かる同人誌を描きましょうという内容。
タイトルと内容にそごがある。「コミックスタジオで萌え同人誌を完成させよう!」が良いように思う。付属CD-ROMにComicStudio EX 4.0体験版と3作品(各12ページ)のデータが入っているように、デジタルマンガ=コミスタの一択で話が進んでいます。かといってコミスタのテクニックに関しては公式ガイドの方が詳しいです。
テーマが広範囲すぎる。PC周辺機器からコミスタの使い方、ストーリーのジャンルや組み立て、キャラの性格から細かい作画ポイント、さらにはケータイ作品などの発表の仕方から著作権、手の抜き方まであって混乱します。あえていうなら「初心者に1ページでも手抜きしてもいいから原稿を完成させなさい」という趣旨のようです。
■プロの現場から学ぶ!デジタル世代のマンガ描き方ガイド(技術評論社)
面白かったのは「漫画家」の変化。雑誌が減り漫画家の数は減っていると思っていたけど、同人誌を描く同人作家も儲かるのだから「漫画家」として、むしろ数も活躍の場も大幅に増えているという見解。商業誌の原稿料、同人誌の収入等を比較して、同じ才能の漫画家なら同人誌の方がより儲かる。商業誌で上回るのはアニメ化などメジャー化したほんの一部の漫画家のみという。同人誌を優先して、商業誌は名を上げるためという割りきりがすごい。
収入目的なら、同人誌>商業誌>ネットで、はやく有名になりたいなら、ネット>商業誌>同人誌。どちらでも一番苦労するのは商業誌の漫画家になる。ある程度のレベルなら、ネットで無料公開→同人誌即売、もしくは出版社による単行本化が効率的な時代なのかもしれない。その生産性を確保する為にもデジタルによる一人でも描ける高速化が必須という話か。
それにしても商業誌の漫画家は微妙な立場になった。昔なら「有名になりたい」「後世に残る作品を描きたい」「子供に夢を与えたい」などあったけど、今はネットで発表すれば事足りる。商業誌で描く理由は「お金を稼ぐ」で、それは生活のため重要なことだけど、払う犠牲のわりには対価(ページ8千円で計算されていた)が少ないように思う。まして同人誌の方が売れやすく高収入になるのなら「人は低きに流れていく」の通りになる。
ISBN-13: 9784774140605
▼目次(プロの現場から学ぶ! デジタル世代のマンガ描き方ガイド)
まえがき p.3
もくじ p.4-9
付属CD-ROMについて p.10
ComicStudio体験版について p.11
本書の読み方 p.12
第1章漫画を描く前に p.13
どうしてマンガを最後まで描けないのか? p.14
デジタルで激変するマンガ制作環境 p.16
マンガ家デビューはさほど難しくない p.18
マンガを描いて生活することは可能か? p.20
絵がうまくなくてもマンガ家にはなれる! p.22
デジタルでマンガを描く場合ComicStudioが基本 p.24
Column ノートPCは使えるか? p.32
第2章まずは描くからはじめる p.33
ComicStudioを使ってマンガの絵を描いていこう p.34
キャラクターの「アタリ」を描いてみよう p.36
個性を発揮させるための最重要パーツ「目」を描く p.38
流行を取り入れて現在進行形のウケるキャラを作る p.40
キャラクターの髪型は資料を参照して描くこと! p.42
「美少女」に見せるためのテクニックいろいろ p.44
最低限覚えておきたい美術上のテクニック p.48
意図的に少し地味目にして主役キャラクターを作る p.50
どんなに濃くても大丈夫!脇役キャラクターを作る p.52
落書きから1ページマンガを作ろう 落書きから物語を作っていく p.54
落書きマンガをベースにしてプロットを作ってみよう p.58
シナリオからネームを作成しよう 吹き出しの作成とセリフの書き込み p.60
Column ComicStudioをアイデアプロセッサにする p.64
第3章漫画の形に整える p.65
フルデジタル作業での枠線の引き方 p.66
キャラクターの主線を入れていく p.70
専用ツールを使ってベタを塗っていく p.74
ComicStudioでトーン処理を行なう p.78
特殊効果をさらに極めて見栄えのする作品を作ろう p.82
自作マンガに背景を描き込んでいく p.84
セリフを書き込んで完全パッケージ作品にする p.86
マンガのタイトルロゴを自分の手で制作しよう p.90
マンガを他形式のデータファイルに出力しよう p.92
Column 自分なりの作画術を工夫する p.94
第4章人気同人作家の仕事術 p.95
「自分の得意な分野」をジャンルとして確立しよう p.96
キャラクターから作るかストーリーから作るか p.98
誰もが個性的だと思うキャラ設定の基本 p.100
思いついたことをまとめて設定ノートを作ろう p.102
物語が展開していく舞台を考える p.104
メインキャラの魅力を引き出す個性的なサブキャラを考えよう p.106
読者を引き込むことのできるストーリー展開の基本 p.108
プロパティとアクションでストーリー作り p.110
プロットからシナリオへとマンガのストーリーを発展させる p.114
文字で書かれたシナリオから絵のあるネームへ p.118
指定ページに収めるためのテクニックあれこれ p.120
Column 職人芸もデジタル化してしまおう! p.122
第5章漫画の完成度を高めるテク p.123
完成度を上げる5つのポイント キャラメイキングを見直す p.124
「起承転結」にこだわらず自由な発想で物語を組み立てよう p.128
ライトノベルとマンガの違いをしっかり意識しよう p.130
キャラクターの話す言葉に特徴を持たせる p.132
さらにこんなポイントに気を配ってみよう p.134
マンガにおける恋愛要素について p.138
マンガで表現する「笑い」のテクニック p.142
マンガで表現する「泣き」のテクニック p.144
パロディを効果的に使うのは簡単なようで難しい p.146
マンガを「終わらせる」ためのテクニックいろいろ p.148
Column 完結した作品を数多く作れ! p.152
第6章『作品』から『商品』へ p.153
自作のマンガを同人誌として出版する p.154
自作のマンガを出版社に持ち込む! p.160
ケータイマンガ家としてデビューするための心得 p.166
ホームページを使ってのマンガデータ公開 p.172
原稿料のシステムと商業マンガの著作権の扱い p.176
付録:マンガサンプル
『ハルコさんの彼氏』倉塚りこ(スルーブレイカー) p.178
『だいなメイドうぃずあれざーびーむ』難波久美(Anbient Cafe) p.180
『バーサーカーナイト』SIGNAL(K.M.T) p.182
付録:Index p.184
絵師紹介 p.189
奥付/JCN:著者というか制作会社 p.192
◆あなたもマンガが描ける ComicStudio 4.0 公式ガイド
◆激マン8 デジタルでマンガを描こう
◆Photoshop Elements 漫画テクニック