脳と気持ちの整理術

 多くの外来患者を診てきた脳神経外科医の経験から、前向きな自分・効率的にアイデアをひらめく脳になるよう「思考と気持ちを整理する技術」を示した指南書です。

脳と気持ちの整理術脳と気持ちの整理術 意欲・実行・解決力を高める (生活人新書)

 前著が「脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める」で、衰えたり混乱した脳を正常状態に持っていくための習慣を説いています。本書はその続編で、困難な問題に直面しても混乱した脳の状態に戻らないよう解決策を示して行きます。

 全体テーマは「前向きに仕事をこなせるよう、記憶と感情をコントロールする」です。各章各項目にて、問題を挙げ→解決策を説明し→2行でまとめるの流れになっています。端から端まで多くの悩みに対して処方箋を出している。簡単にまとめるのは難しいので、クリエイト的に気になる所をピックアップします。


脳と気持ちの整理術 意欲・実行・解決力を高める(NHK出版)

 やる気がでない時の対処法が『作業興奮』。脳を活性化するのに、日光を浴びる(蛍光灯でもモニターでも)とか、コーヒーを飲む(カフェインの分解は遅いから午前中だけ)とかもあるけど、手作業が良いようだ。短い時間で疲れない程度に、机の整理とか掃除・落書き・好きなオモチャを弄る・プラモをつくるなど。できれば仕事に関係する作業が望ましい。

 人は忘れるように出来ていて「覚えるためには出力することが大切」になる。ただ読んだり・観たり・聴いたりした『入力』はすぐ忘れてしまう。アウトプットが超重要で、メモ程度でも書いたり・声に出したりして『出力+再入力』で記憶を強化するべき。

 「一時記憶の小さな机」と「長期記憶の書庫」の関係。一時記憶は起きている時間だけ、1日も持たないという。寝ることによって情報を整理して長期記憶に記録します。徹夜をするとオーバーした分の一時記憶は消える。

 その脳の性質から、寝る前に詰め込みの勉強・映画・本を読むのは好いようです。逆に夜、アイデアを考えたり・悩んだりすることは感情の振れ幅が大きくなって、ネガティブ思考になるのでやめましょう。脳を休めて記憶が整理された朝方が、冷静な分析によって良きアイデアをみつけやすい。

 感情のバランスをとる作業配分は、(楽しいこと・ルーチンワーク)6割:(少し嫌な・面倒なこと)3割:(すごく嫌な・不快なこと)1割です。脳は省力化を志向するので不快なことが無くなると、残りから相対的に不快なことを見つけてくる。不快を排除し続けると何もできなくなって停滞するので、意欲があるうちにバランスをとりましょう。

 脳みそ本は読みやすくて、今のところ矛盾がなく素晴らしい。これが教育やダイエット本になると真逆の主張がゴロゴロしていて救われないです。

脳と気持ちの整理術中身01

脳と気持ちの整理術中身02

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脳と気持ちの整理術中身04

脳と気持ちの整理術中身05

脳と気持ちの整理術中身06

ISBN-13: 9784140882504
▼目次(脳と気持ちの整理術 意欲・実行・解決力を高める
はじめに 困難なときこそ、脳の原則に還ろう p.3-6
もくじ p.8-15

第1章 前向きな自分をつくる p.17
1意欲を高めるための基本原則 p.18
◇まずは健康。それから「欲」「好き・嫌い」「ほどよい興奮」
◇「できること」が増えると「好き」になる
◇「五歩先に解決がある問題」の一歩目を見つける
◇現代人に求められている「自助力」
◇脳の成長が加速度的に進む段階がある
2「やる気が出ない」ときの対処法 p.30
◇興奮状態は意欲につながる
◇「簡単な問題からでもいいから解きなさい」
◇「作業興奮」の効果を大きくする方法
◇「難しい仕事を任されてる人」が陥りやすい悪循環
◇大変な仕事をするときには「助走」が要る
3脳をリフレッシュさせる技術 p.39
◇同じことを続けていると早く疲れやすい
◇アプローチを変えれば新鮮に取り組める
◇不完全であっても答案用紙は必ず出す
4「脳のエネルギーの投資先」を明確にしよう p.45
◇「午前中の予定はどうなっている?」
◇前日の夜のうちに、「明日すること」を書いておく
◇準備や予習は歳を取ってからこそ大切になる
5まず「誰のために」を考えよう p.51
◇自分は誰に対して、どんな役割を担っているか?
◇人からの感謝や評価は意欲を高めるエネルギー源
◇自分本意は脳にとって楽ではない

第2章 思考の整理術 計画・実行力を高める p.57
1「見えない敵」が脳を混乱させる p.58
◇感情に思考を加えてバランスを取る
◇「何となく見えているとき」がいちばん怖い
◇冷静に思考する力を奪う悪習
2「気になっていることリスト」をつくろう p.64
◇感情から切り離された情報を一枚の紙に
◇思考の整理は引き算で考える
◇「人に任せられる」というのは重要な能力
3時間的整理 仕事と「私」を多次元的に捉えよう p.74
◇時間の流れを見失うとパニックになる
◇「その日の私」「その時の私」に仕事を割り振る
◇段取りにとらわれすぎてもいけない
◇「結果的に実行したこと」も記録する
4空間的整理 仕事の効率に差をつける物の整理 p.81
◇「気になる」という感情を処理する
◇「昔の恋人」と「気になる仕事」
◇物を整理しているとき、脳の中の情報も整理される
◇先に入れ物を用意すると整理しやすい
5仕事を溜め込まないようにするコツ p.88
◇手つかずの仕事を溜め込んでしまうとき
◇脳は変化に反応する
◇問題解決のヒントは自分でつくる

第3章 記憶を強化する技術 p.95
1情報を覚えるためには努力が要る p.96
◇「他人の脳」の中にある知識
◇入力はただの入力。出力は「出力+再入力」
◇脳は「忘れるようにできている」
2「脳の中の小さな机」を意識しよう p.104
◇「一時記憶の机」と「長期記憶の書庫」
◇「一時記憶の机」がいっぱいになると・・・・・
◇「アイデアはたくさん思い浮かんでいるのにまとめられない」
◇記憶の「ファイル化」と「まとめ」
◇情報化社会ならではの脳の問題
3記憶を引き出す手がかりをつくろう(キーワード化) p.114
◇「その日のうちに復習する」が記憶を定着させる鍵
◇キーワードを拾いながら読むと理解が速くなる
◇情報は「差異」に注目することが大切
◇「意見」と「論拠」を押さえる
4風景やイメージとして記憶しよう p.123
◇言葉だけで覚えるのには限界がある
◇情報を自分の体験と結びつける
◇説明文を読むときでもイメージ化は有効
5出力の機会にバリエーションを持たせよう p.130
◇記憶には自由に使える「有効期限」がある
◇『論語』の冒頭は記憶の強化法に通じている
◇多面的な出力が知識の有効性を高める
◇社会の現状に合わせて、記憶をリニューアルしていく

第4章 アイデアを生み出す技術 p.137
1創造力を高める生き方、考え方 p.138
◇「アイデアが突然ひらめく」という現象の正体
◇環境からアイデアの材料を与えられている
◇制約があるからこそ、良いアイデアを生み出せる
2「ひらめきの連鎖」を生み出そう p.144
◇「滅茶苦茶なアイデアでも出すように」
◇良質の刺激を脳に与える合理的な方法
3脳を休めなければ、大きな思考はできない p.150
◇「悲しい話は夜するな」 アイデアも夜考えない方がいい
◇散歩には目と脳を休める効果がある
4社会の「必要」に気づくために大切なこと p.155
◇既存のものとの差異が新しい価値になる
◇自分の仕事に本気で取り組むことがアイデアの芽を育む
◇「一人の役に立ちたい」という思いから出発する
5考えるほど、問題が複雑化してしまうとき p.162
◇「答えにくい質問」はどんなものか?
◇話がこじれていくときの特徴
◇「主観の世界」と「現実」のバランス

第5章 気持ちの整理術 p.171
1脳を安定させる「感情のリスク・コントロール」 p.172
◇不快な刺激を相対的に減らす
◇「強い不快+強い快」では平衡が保てない
◇感情のコントロールは6・3・1のバランスで考える
◇脳は「省力化」を志向している
◇「嫌なこと、面倒なこと」はなくならない
2解釈を変え、不快をやわらげる方法 p.180
◇感情は記憶に対する解釈に付随している
◇「他人の脳」で考える
◇社会全体の感情のバランスを考える
◇「松下幸之助さんならどう考えるか?」
◇時間的視野を広げ、得てきたものを確認する
◇「得をする役」ばかり担っているのは良くない
3目標を持っている人はなぜ強いのか p.189
◇人生の荒波を乗り切るために、自分という船の舵を取る
◇「悲しさや悔しさをバネにする」ということ
◇目標は出力した言葉の中から発見するもの
◇目標は中間地点を設けることで実現させやすくなる
◇日々誰かの役に立っていることも大切

あとがきに代えて p.200-203
奥付 p.205

「続ける・やめる」は脳でコントロールできる!
クリエイティブの授業 STEAL LIKE AN ARTIST
アイデアのつくり方

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