マンガで食えない人の壁 プロがプロたる所以編

 漫画家や編集者どうしの対談から、デビュー後にぶつかる壁をどう突破したのか?を探る、プロであり続けるための金言集。

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マンガで食えない人の壁 プロがプロたる所以編 (honto)

 前著『マンガで食えない人の壁』で、デビューまでの道のりよりは、その後の方が大切で困難であることが分かりました。

 そこで本書では、多くの漫画家を育てた編集者・似たタイプの漫画家たちに対談してもらい、共通の体験や「あの時はどう乗り越えたか?」などを本音で語ってもらいます。デビューの壁の向こう側を見せてくれる対談集です。

 端から端まで『金言』で埋まっていてページ数のわりに内容が濃く、マンガ業界の読み物としても楽しめました。

 対談1.『堀江信彦×佐渡島庸平』黄金期のジャンプを知る5代目の元編集長と、講談社でヒット作を連発した編集者の対談。新人のどこを観て「絵がうまくなる」と判断し、どう育てているのか?天才タイプのキャラクターマンガから、秀才による設定マンガへの選別と移行などを語ります。編集者の手の内を知ることができ、最もためになるでしょう。


11月11日『マンガで食えない人の壁 -プロがプロたる所以 編- 』発刊!(トキワ荘プロジェクト)

 対談2.『新條まゆ×樹崎聖』漫画家であり『バカでも描けるまんが教室』×『10年メシが食える漫画家入門』の著者の対談。漫画家として貪欲に成長するために「持つべき姿勢」と「取るべき行動」を体験談から語ります。

 対談3.『うめ×きづきあきら+サトウナンキ』夫婦でコンビを組む漫画家4人の座談。2人以上の作業において効率を上げる作業分担や、意見が対立したり話が煮詰まったときの整理方法など。デュアルコアCPUみたいでズルいです。

 対談4.『甲斐谷忍×栗原正尚』新人の頃からの知り合いでライバル関係でもある漫画家の対談。なぜ生き残ることができたのか?暗黒時代に何をすれば良いのか?また消えていった者達は何がダメだったのか?グサグサ刺さり、もっとも残酷な章です。

 対談5.『上條淳士×二ノ宮知子』「TO-Y」×「のだめカンタービレ」ともに音楽マンガで大ヒットした代表作を持つ漫画家の対談。さらに天才肌の2人は、我が道を行くエピソードが面白くて、一番笑いました。ありがとうございます。

 プロの道といってもデビューの年代や雑誌・ジャンルによっても、経験則に違いがあって興味深い話でした。ただ、前著と比べて厳しさにおいてもパワーアップしている。

 この本を読む人の大半は『デビュー』していないだろうに、壁の向こうは地獄かも知れないという内容ともとれます。それは『キャッチボールができないのに野球選手を目指す人はいないけど、マンガが描けないのに漫画家を目指す人は結構いる』という状況を減らしたいからです。せめて新人賞を獲得するか・持ち込み原稿が評価されて担当編集が付いてから、上京するなり目指すべきと云っています。

 読むだけで『プロになれるか?どうかの覚悟を試される』良書です。

マンガで食えない人の壁プロがプロたる所以編中身01

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ISBN-13: 9784990545161
▼目次(マンガで食えない人の壁 プロがプロたる所以編
はじめに:トキワ荘プロジェクト菊池健 p.2-7
もくじ p.8-10

第1部 プロ(作家)を支えるプロ(編集者)の仕事術 p.11
堀江信彦(株式会社コアミックス)×佐渡島庸平(株式会社コルク) p.12
『マンガの未来を編む』マンガ編集者の使命 p.13
・編集者とマンガ家の正しい付き合い方 p.14
・ヒットを生み出す法則 p.23
・マンガの未来を創造する p.35
・質疑応答 p.43
【『壁』を乗り越えるためのヒント】堀江信彦からのアドバイス:
読者が喜ぶためなら困難な道を選ぶ事。楽な脇道に逃げてはいけない。 p.48
【『壁』を乗り越えるためのヒント】佐渡島庸平からのアドバイス:
マンガを本当に好きかどうか?自己表現の手段としてマンガがある場合、5年、10年、やると飽きてきてしまう。本当にマンガを好きであれば、40年、50年、そして、死ぬまで楽しみながら努力できる。 p.49

第2部 プロたる所以i -技術編- p.51
新條まゆ×樹崎聖 p.52
時代と自分を常に把握する『折れないプライドの作り方』 p.53
・伸びるマンガ家の絶対条件 p.54
・明確な方向性を決めて描く p.60
・積極的に自分に投資をする p.66
・将来に役立つ経験と行動 p.72
【『壁』を乗り越えるためのヒント】新條まゆからのアドバイス:
自分の売りを見失わないこと。次の新しい壁に挑戦するためには、何かを壊したいとか新しいことをしたいと思って、すべてゼロにしたいと思いがちだけど自分の売りは、一生持ち続ける宝物のようなもの。それだけは壊しちゃいけないと思う。売りがないと思ってる人は、これは一番好きだというのがその人の売りになっていく。売れるということは、その売りが世間に認められるということだと思う。 p.79
【『壁』を乗り越えるためのヒント】樹崎聖からのアドバイス:
自分の嫌だった事、悲しかった事、悔しかった事、恥ずかしかった事…向き合いたくない事と向き合って自分自身を掘り出し、探し続ける事。特に子供の頃の思い、自分の中の気づき、本物の思いを大切に! p.80
うめ×きづきあきら+サトウナンキ p.82
ひとつの作品を夫婦で生み出す『夫婦マンガ家創作術』 p.83
・「夫婦マンガ家」はこうしてできあがる p.84
・二人で描くことの良い点・悪い点 p.90
・ポイントは「読者意識」と「意思統一」 p.97
【『壁』を乗り越えるためのヒント】Q1.漫画家が自分自身で次の壁を設定していくためには、どんな点に意識すべきか、取り組むべきだと思うか。:
そもそも壁が見えないのなら、それはもう描く必要がない幸せな状況。こんなことから解放されて、自由になってください。ぼんやりとした壁があるけどよく見えない、という場合は、できるだけ具体的な数値目標に置き換えること。◯月までに◯ページ描くとか、今年は賞金総額◯万円稼ぐとか。(うめ)
わざと苦手なことを中心に据えた話を描く。得意なことをもっと追求した話を描く。つまらない話を考えて、面白くなるなるまで直す。(きづき+サトウ)
p.114
【『壁』を乗り越えるためのヒント】Q2.作家の二人組でマンガを描く場合と、編集者と一対一で描いていく場合とで共通して、パートナーと質の高い仕事をするためのコツ。:
相手は学校の先生じゃない。正解なんて知らない。打ち合わせは答えあわせじゃない。創造の場であることを忘れない。(うめ)
意見が食い違った時は、お互いに、相手の意見を採用して面白くなる可能性を、相手と一緒に考える。(きづき+サトウ)
p.115
甲斐谷忍×栗原正尚 p.116
最速の突破口『プロの継続力』 p.117
・不遇の新人時代はこう乗り越える p.118
・プロがもっとも重視していること p.125
・新人、志望者は「意識改革」から始めよ p.133
【『壁』を乗り越えるためのヒント】甲斐谷忍からのアドバイス:
プロ漫画家は人気商売ですから、向かい風の時もあれば、びっくりするくらいの追い風が吹くこともあります。追い風のときに楽をするんではなくて、次に来る向かい風を乗り越える力をつけることを意識することが大事なんじゃないでしょうか。 p.151
【『壁』を乗り越えるためのヒント】栗原正尚からのアドバイス:
壁という意識よりも、『階段を一段ずつ登る』意識のほうが良いと思います。急がば回れです。 p.152

第3部 プロたる所以ii -様式編- p.153
上條淳士×二ノ宮知子 p.154
マンガで奏でる先にあるもの『創作の流儀』 p.155
SCENE 1 Start(スタート)デビューのきっかけ p.156
SCENE 2 Music(ミュージック)作者の音楽経験 p.164
SCENE 3 Creative(クリエイティブ)キャラクター造形のこだわり p.170
SCENE 4 Love(ラブ)作品における恋愛観 p.182
SCENE 5 Style(スタイル)影響を受けた作家 p.187
【『壁』を乗り越えるためのヒント】上條淳士からのアドバイス:
残念ですが、わざわざ設定しなくても壁は勝手に立ちはだかります。ひとつ描き終えたらまた次の壁が。なので、今かかっている仕事を一生懸命やるしかありません。もし、ひとつの壁を越えた時に次の壁が前より低かったり、壁自体がなくなっていたら…その時はペンをゴルフクラブに持ち替えた方がいいのかもしれません。ぼくの目の前にも今、とても高い壁があります。なかなか描けません。そして、壁のなかでいちばん楽な壁は、デビューするという壁です。その壁はとっとと越えてください。 p.196
【『壁』を乗り越えるためのヒント】二ノ宮知子からのアドバイス:
壁にぶつかってる事に気がづかない人もいるので、自分の漫画やその立ち位置を客観視したほうがいいですね。私も今、立ち位置の確認の為、他作家の最新の漫画をちゃんと読まなきゃと思っています。 p.197

あとがき p.198-203
奥付 p.206
表紙イラスト:西修(トキワ荘プロジェクトOG、ジャンプスクエア『ホテル ヘルヘイム』連載中)

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