背景画集「草薙Ⅱ(2)SF編」
アニメ背景専門の会社「草薙」の画集で2冊目になります。今回はSF編ということで機械的な暗めの背景画が多いです。
画集なので絵のことは絵に語ってもらうことにして、前回の草薙Ⅰでも好評だった文章部分についてです。
「草薙秘話Ⅱ」はアニメ背景専門会社がゲームの背景パートに食い込んでいく話です。スクウェアの「ファイナルファンタジーⅦ」のスタッフ急募にふつうに応募したのが面白い。それまでの経緯をみると、原稿もって何社も出版社まわりをしていたら、大先生が原稿落としてデビューできた漫画家のような話でした。
そして、あの映画「ファイナルファンタジー」製作秘話。企画段階では、手描きアニメ技術を活かし当時のCG技術で十分可能なレベルの冒険活劇を目指すか、大資本(160億円)を投下し3DCGの未来をかけてリアルな人間を3DCGで芝居をさせ実写映画に近い映像を作るかで議論が分かれたそうです。結果は後者で大敗したわけですが、「日本の3DCGクリエーターが驚異的に育つ」という遺産を残したようです。
「草薙に質問」のコーナー。「色をどう捉えているか?」という質問で、デジタル化でどんな色でも発色を良くすることが出来るようになり、むしろ不自然に目立つ派手な色使いになってしまう。で詰まるところ「光源と発色・配色の関係」でアナログ時代の自然の配色が基本になると。僕なりの解釈では「デジタルでの色温度と色相の理解」がポイントになると思う。
アナログとデジタルのメリットとデメリット。印象的なのがデジタルのメリット「2.フォトショップの技能があれば即戦力も可能」、デメリット「2.自分の技術で描いた実感がもてない」職人からオペレーターになったということか。それと「手描きのみの新人スタッフは採用しない」前のもそうでしたが完全に「PhotoShop」全能時代になった感じがします。手描きの技術より「フォトショップが使えるか?」の方が重要なんですね。
岩肌などのデジタルでの質感の出し方。テクスチャーを使う。均一には貼らず手を加えて自然に見えるように修正する。結局、アナログの筆や紙の擦れや絵の具の盛り上がりの表現が難しいようで、Painterに豊富な機能がある部分です。
「目指すべき背景画」についてはそれぞれ違うという回答。{「トトロ」の男鹿和雄さんの描かれる水彩画のような絵を目指す方もいれば、「鉄コン筋クリート」の木村真二さんのようにデフォルメも入った量感を目指す方もいると思います。「東京ゴッドファーザーズ」の池信孝さんのように写真のようなリアルな背景画も魅力があります。}という背景画の違いと評価。
にしても「じゃりん子チエ」の商店の看板に名前が使われたり、「あしたのジョー」の墓石の名前に社内スタッフのを使ったり、背景画も知らないところで面白そうです。
▼目次(背景画集 草薙2 SF編)
草薙秘話2 中座洋次(草薙代表) p.4
草薙オリジナル作品 p.6
作品タイトル
フリーダム【CMアニメ】小倉一男(美術監督) p.10~p.21
アップルシード【劇場用アニメ】須江信人(舞台デザイン) p.22~p.39
太陽の船 ソルビアンカ【OVA】須江信人(美術監督) p.40~p.47
メルティランサー The Animation【OVA】
小倉一男(美術監督)成田伸子(テンキー代表) p.48~p.59
超神姫 ダンガイザー3【OVA】
小倉一男(美術監督)成田偉保(美術設定) p.60~p.75
アミテージ・デュアルマトリックス【OVA】
須江信人(美術監督) p.76~p.87
ギャラクシー・エンジェル【GAME】須江信人(美術監督) p.88~p.99
爆裂天使【TVアニメ】佐藤豪志(美術ボード) p.100~p.115
未公開作品【GAME】須江信人(舞台デザイン) p.116~p.121
草薙に質問 中座洋次(草薙代表)p.122
掲載作品の著作権について p.126
あとがきにかえて MooDee(草薙専属デザイナー) p.127
自分が書店に行かなくても本の購入判断ができるレベルで、中身画像を載せています。
もちろん、著作権者からの削除要請があれば従いますが、今のところないと判断しています。