もののけ姫 絵コンテ
当初「ナウシカ2」ともいわれたほど壮大なテーマを持った作品で、ジブリの原点に戻ったような映画。そしてスタジオジブリがディズニーと組んで世界進出を果たし成功させた作品でもある。
絵コンテ集には「月報」という付録があって、今回は井上雄彦。「バカボンド」でも刀を持つ以上人の死は避けられず、その表現に悩んでいたところ宮崎駿の映画ですら「目を背けたくなるシーン」を真正面から描いていることに勇気づけられたようだ。
この絵コンテの見物は宮崎駿以外の筆跡と代用絵コンテなるもので補足されていることです。これは制作終盤になって結末を弄られた所為だとされていて、結果15分尺が延び(ジブリの制作能力で3ヶ月分)監督自ら絵コンテなしでレイアウト作業をし、総動員態勢やデジタル作業なども導入して1ヶ月オーバーで完成させた経緯があります。
■もののけ姫(Wikipedia)
絵コンテ上、削られたカットは判りませんが、付け足されたカットは明確になっている。まず暴走したシシ神のシーンで、まっすぐ首を追わずタタラ場に急を告げにアシタカがやって来て、みんながタタラ場から避難する複数のカット。取り返したシシ神の首を掲げ、サンとアシタカの体が急速に腐り、ディダラボッチに生気を吸われているシーンでいきなり、避難するタタラ場のカットが付け足されている。いっぽう草木が芽吹くシーンの一部や最後の締めは監督の絵コンテです。ただサンとアシタカが生きているシーンは線の勢いがなく、間があいた印象を受ける。
つまり憶測でいうと、暴走したシシ神は戦争している地侍とタタラ場を呑み込み、それでもサンとアシタカが命を賭して首を返したおかげで、禿げ山から砂漠化するだけのシシ神の森を新芽が吹雪く程度には残してくれて、わずかに生き残ったタタラ場の村人と片腕を失ったエボシが「(自然ともに)生きよう」とする終局なのではなかったかと思う。
蛇足もいいところだが、そうなってくるとクライマックスはやはりシシ神に首をお返しするシーンだろう。2人で首を掲げ、ともにアザが拡がり、サンを抱き寄せたアシタカは最後にキスをするのだろう。そこで初めてもののけ姫はその意味を知りつつ、ディダラボッチの中に消えていく・・・そんな気がする。
▼目次(もののけ姫スタジオジブリ絵コンテ全集11)
もくじ p.2
絵コンテの見方 p.4
用語解説 p.6
Aパート(カット1~336) p.9
Bパート(カット337~679) p.129
Cパート(カット680A~1033) p.237
Dパート(カット1034~1669) p.337
資料編 p.599
絵コンテと本編の違い(欠番一覧) p.600
STAFF&CAST p.601
DATA p.605
アニメーション画面処理について p.607
奥付 p.622
付録:月報2002年1月(冊子12ページ)
宮崎監督の作品のテーマは紛れもなく人間であるように感じます 井上雄彦 p.2-4 /作品論「もののけ姫」 おかだえみこ p.5-12