ミュシャ装飾デザイン集
アール・ヌーヴォーの巨匠「アルフォンス・ミュシャ」が、学生・デザイナー・イラストレーター向けに刊行したデザイン・ハンドブック2冊(装飾資料集、装飾人物集)を完全収録しています。
第1章は「装飾資料集」です。ミュシャが42歳の時に、私塾でデザインを教えていたが間に合わず、学生・デザイナー・イラストレーターのリクエストに応えて出版したもの。1902年刊行、図版ページ72点。
第2章は「装飾人物集」です。「装飾資料集」の好評に応え3年後の1905年に刊行、図版ページ40点。10代の少年少女・20代とおぼしき若い娘の人物画のみで構成され、女性像をテーマにした人物デザイン集になります。
第3章「ミュシャと商業デザイン」は、ミュシャが手がけた挿絵、雑誌の表紙、パッケージデザイン、絵葉書、チェコの紙幣、切手、クラフトデザインなど。
ページは少ないですが、考察テキストも面白い。100年前、大衆向けに始まったイラストデザインのミュシャと、江戸時代の浮世絵との共通性(輪郭の強調、自然・植物からデザインする、実用・日用品に印刷する)とか、いろいろと考えさせられます。
ミュシャの特徴は、輪郭線を強調した女性キャラをメインにする。植物をデザイン化してパターンの繰り返し。構図は矩形(くけい)、円形(楕円形)、三角形(逆三角形)、アーチ形、扇形、巴形、星形、ハート形と多様です。
今に通じるキャラクターイラストの要素が全部ある。とくにカードゲーム用イラストとの親和性が高い。そして刊行当初から著作権のような設定がなく、学生やデザイナーが自由に使えるという。21世紀の今に居て欲しいイラストレーターです。
↓洋書版の装飾人物集(Mucha's Figures Decoratives)との比較。図版は少しだけ洋書版の方が大きい。印刷は本書(左)の方がきれい。線画をクッキリさせるために紙色をつけたりして調整している様です。洋書では見えなかった鉛筆線のタッチが読み取れます。
ISBN-13: 9784808709594
▼目次(ミュシャ装飾デザイン集『装飾資料集』『装飾人物集』)
はじめに デザイナーとしてのミュシャ p.2-5
もくじ p.6
第1章『装飾資料集』 p.7
Documents Decoratifs(図版72ページ)
『装飾資料集』について p.9
第2章『装飾人物集』 p.85
Figures Decoratives(図版40ぺージ)
『装飾人物集』について p.87
第3章 ミュシャと商業デザイン p.131
Dessin Commercial
知られざるミュシャ p.132
おわりに ミュシャとアール・ヌーヴォー p.166
奥付 p.168
本書は、リブレリー・サントラル・デ・ボザール社から1902年に出版された『装飾資料集』と1905年に出版された『装飾人物集』を1冊にまとめ復刻したものです。
この調子で全作品が掲載されてる「全集」の日本語版など、安価で発売されるとイイよな~