空気を描く美術 小林七郎画集
不勉強で存じ上げませんでしたが、今のアニメ背景美術の開祖の様な方です。男鹿和雄、小倉宏昌の師匠であり、それまでのぬり絵のような平面的背景を存在感のある「絵画」した人でもあります。
■小林七郎(Wikipedia)
空気を描く美術―小林七郎画集 (ジブリTHE ARTシリーズ)
とても一人の絵とは思えないほど多彩なタッチで描かれています。それでいて存在感があり印象に残っている。憶えているのは「天使のたまご」の独特な暗さ、「コブラ」のクリスタル、「ヴイナス戦記」の赤茶けた大地、そして「カリオストロの城」は背景の城だけで魅せてるところもあるわけで・・・こんな薄い画集では紹介しきれないよ。
もう少し作品を載せて欲しかったけど、寄稿している面々の話も面白い。とても恐い人のようだ。とにかくダメなものはダメで、監督が持ってきた絵コンテだろうが、下から上がってきた原画だろうが問答無用で修正する。他にそこまでする美術監督っているのだろうか?
そして昨今のデジタル背景にも警鐘を鳴らす。手技によって描かれたものではなく、ソフトの操作によって安易に目新しい効果が出せるようになったのは長期的にはよくない。ソフトの性能に制限された加工物しか作れず、新しい技術を創造する試みすら無くなるのではないか?手技(アナログ)と、ソフトがどういうデジタル処理をしているか、両方理解していないと新しい試みはなかなか出来ないだろう。
生まれて初めての絵がタブレットで描いたという世代が当たり前になる時代、新しい表現は生まれなくなるのか?それともソフト開発の方で担うのか?正直どうなるかわかりません。ただ、見る側としては全体のレベルが一定になり、見慣れてしまい、背景に感動するということは減った気がする。もっとも背景画だけで魅せるシーンというのもあまり見かけなくなったと思うけど。
▼目次(空気を描く美術 小林七郎画集)
新たな様式の世界を切り開く
ガンバの冒険 p.4
家なき子 p.16
宝島 p.22
はじめ人間ギャートルズ p.24
元祖天才バカボン p.26
あしたのジョー2 p.28
自由に発想を飛翔させ、空想の世界を映像の中に描く
うる星やつらビューティフルドリーマー p.30
天使のたまご p.32
ヴイナス戦記 p.36
少女革命ウテナアドゥレセンス黙示録 p.40
剣風伝奇ベルセルク p.42
魔術師オーフェン p.46
ゲームの仕事
雪割りの花 p.48
七ツ風島の物語 p.49
時の流れの中で豊かに表情を変えていく自然の姿を描く
フィギュア17つばさ&ヒカル p.50
夢かける高原清里の父ポール・ラッシュ p.58
その他の作品
パンダコパンダ雨ふりサーカスの巻/コブラ p.60
小鹿物語/ねこひきのオルオラネ p.61
街角のメルヘン/赤ずきんチャチャ p.62
ちっちゃな雪使いシュガー/アテルイ p.63
自分のイメージを求めて p.64
「美術・小林七郎」を語る
インタビュー
出崎統 p.68 /押井守 p.74 /望月智充 p.79
美術設定集
「少女革命ウテナアドゥレセンス黙示録」 p.82
「ポケットモンスターピチューとピカチュウ」 p.84
「ポケットモンスターピカチュウのドキドキかくれんぼ」 p.88
コメント
男鹿和雄 p.89
小林七郎インタビュー p.92
オリジナルの世界を求めて p.100
フィルモグラフィー/あとがきにかえて p.102