北方のマニエリスム画集

 耽美的な西洋絵画を収録した画集「ピナコテーカ・トレヴィル・シリーズ」の第10集。誇張された裸体表現の実験場となった北方マニエリスムの名画とその系譜を紹介。

北方のマニエリスム画集北方のマニエリスム画集(ピナコテーカ・トレヴィル・シリーズ10)

 マニエリスムは、16~17世紀前半までのルネサンスからバロックへの移行期におきた芸術様式です。個人の様式・手法を意味している。感情表現にもとづく誇張された肉体表現や、派手な色彩、様式化したアピール姿勢など、一般人にも解る俗っぽい表現になります。

 北方マニエリスムはハプスブルク家の庇護のもと宮廷画家を通じて伝播していった。奇想の擬人肖像画、肌の表現にこだわったエロティシズム、筋肉だらけの裸体群で埋め尽くされた宗教画と、まさに芸術性よりも個人的な満足度優先の実験場だったかと。

ピナコテーカ・トレヴィル・シリーズ
北方のマニエリスム画集 ピナコテーカ・トレヴィル・シリーズ10(空想家のための古本屋 享楽堂)

 巻末の解説を読むと、マニエリスムの流れは漫画の流行り絵の動きに似ていると思った。特にストーリー性の薄い成年漫画は被る所が多い。物語より誇張された裸体(エロスポーズ)、肌色表現への情熱、結果増え続ける裸体群、その中で上に行くのはキャラだけじゃなく背景・小物もしっかり描ける人とか。自分がイイと思ったら友達の絵柄だろうが過去の偉人だろうが流行だろうが即取り入れる。依頼内容より描きたい属性に突き進む 。そして、流行によって出来上がった『様式美』と、それゆえの『マンネリ化』との戦い。

 最後は現実感の強いバロックに取って代わられるのだけど、模倣による模倣の果てに現実離れした奇形化が進んで飽きられた、描く方も揺り戻しで自然風景にいった、という結果のようだ。これに2~3世代かかっている。

 漫画のキャラクター至上主義が、これに当てはまるかは分からないけど、個人によるキャラクター性の追求が延々と続くとは思えない。

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ISBN-13: 9784845710584
▼目次(北方のマニエリスム画集 ピナコテーカ・トレヴィル・シリーズ10
※もくじなし
絵画(カラー)1~61点 p.2-72
1-9 ジュセッペ・アルチンボルト
10-19 バルトロメウス・スプランゲル
20-25 ハンス・フォン・アーヘン
26-28 ヨーゼフ・ハインツ
29-30 ディルク・クアーデ・ファン・ラーフェテインス
31 ヨードクス・ア・ヴィンゲ
32-41 コルネリス・コルネリスゾーン・ファン・ハールレム
42-43 ヘンドリック・ホルツィウス
44 カーレル・ファン・マンデル
45 ヘリット・ピーテルスゾーン
46-52 アブラハム・ブルーマールト
53-61 ヨアヒム・ユテヴァール
素描・版画 62~71点 p.73-80
62 ジュセッペ・アルチンボルト
63 スプランゲル原画、サデラー版刻
64 スプランゲル原画、ホルツィウス版刻
65-68 ホルツィウス
69 ホルツィウス原画、ミュラー版刻
70 コルネリス原画、ホルツィウス版刻
71 コルネリス原画、ミュラー版刻
ボディビルダーたちの饗宴(バルトロメウス・スプランゲル、ハンス・フォン・アーヘン、コルネリス・コルネリスゾーン、ヘンドリック・ホルツィウス、カーレル・ファン・マンデル、ヨアヒム・ユテヴァール):高橋達史 p.81-92
図版目録 p.93-100
主要参考文献 p.101
奥付 p.104

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