アイデアのつくり方
米国の広告業界で成功し、ビッグネームのまま引退することができた著者による、アイデアの作り方・ネタの出し方を経験則からまとめた本。
ほんの100ページそこそこの小さな本です。原書は1961年と古典になる。後半に竹内均(科学雑誌ニュートン元編集長)が解説していて、まえがきまで抜けば、本文50ページもないような本です。でも、そこにアイデアは天から降ってくるモノではなく、一定の手順を踏むことによって得られるものだ!と教えてくれます。何某かの成功体験がある人は納得する話かと思う。
まず、才能がある/なしの話。アイデアを閃くことの出来る人は多いし・出来ない人もたくさんいるという。パレートの「心理と社会」という本に、投機的な人(新しい組み合わせの可能性に夢中になる人)、株主(確実な見返りを求める人)が出てくることを引用するのだけど、解るようで解りにくいんで、右利きか/左利きかの違いくらいだと考えます。どちらも多いし、若いときに右利きに矯正して使える人もいる。ただ、歳とって「あなたのしたいことは左利きですよ」といわれたら諦めた方が良いこともある。まず日頃から『考えるのは面倒くさい』と思っている人はペケだろう。
さて本題。『アイデアとは既存の要素の差異と関連性を見つけ出し、新しい組み合わせを創ること』です。アイデアのつくり方は5段階ある。
1.資料・情報を収集する。
資料には2種類あって、その欲しいアイデアに関する専門的な資料と、日頃から興味があって長期的に集める・趣味的な資料。
2.資料・情報をさまざまな角度で比較検討する。
熟読して熟知したら、とりあえず分類する。『新しい組み合わせ』が目的なのだからシンボル的なキーワードで括ると良いでしょう。ロリ、癒し、泣き、BL、恥ずかしいセリフ、爆発等々、好きなキーワードでまとめる。あと『逆転の発想』で一度作ったキャラの男女を変えるとか。ぶっちゃけ知恵熱が出るまで『いろいろと妄想する』
3.寝る。リラックスして間を置く。
寝ている間に脳は情報を整理する。とにかく意識から忘れてリラックスして遊んで待つ。ボ~っとしたり掃除したりするのも、茂木健一郎が云っていた『創造的先延ばし』ってやつです。上級者は、この間に別アイデアの1.2.を平行して行う。
4.アイデアの降臨。
ここだけ見ると天才に見えるのでしょう。1.2.をしっかりやれば必ず来る!と信じるしかない所でもある。あとは課題の大きさもある。万有引力やら相対性理論やらの世界を変えるほどのアイデアとなると、1.2.だけで何年何十年と経過するはず。また、夕飯の献立なら1.冷蔵庫をチェックし、2.レシピ本をみて出来そうなのを挙げて、3.一服すれば、4.何をつくるか決まっている。
5.アイデアの良し悪し、使える使えないの選別。
竹内均の解説によれば、メモしたアイデアの九割以上は使えない、捨てるモノだという。良いアイデアが得られないなら1.2.を時間をかけて見直すしかない。良し悪しの判断は人に話すとか、文章にして、今ならブログに発表して反応をみるのもよいでしょう。
この五段階で、努力できるのは1.2.だけ、2.は時間を掛ける以外無いのだから、最重要なのは1.となる。どれだけ良質な資料、あまり知られていない情報をより多く集められるかが、結果に大きく影響する。
実際の生活では、ある程度の目的・結果(アイデア)を求めて1.2.をいくつも実行する。で、降ってきたアイデアをともかくメモして、冷静になった頃に選別する。その繰り返しなのでしょう。そうなると設定した目的意識と、得られた結果の検証をして記録しないと、成長を感じることが出来ないですね。
ISBN-13: 9784484881041
▼目次(アイデアのつくり方)
もくじ p.2
序 ウィリアム・バーンバック p.5
日本の読者のみなさんに p.9
まえがき p.11
この考察をはじめたいきさつ p.12
経験による公式 p.16
パレートの学説 p.19
心を訓練すること p.25
既存の要素を組み合わせること p.27
アイデアは新しい組み合わせである p.32
心の消化過程 p.43
つねにそれを考えていること p.49
最後の段階 p.52
二、三の追記 p.55
解説 竹内均(Newton初代編集長) p.63
訳者あとがき p.89
奥付 p.103