絵で見る十字軍物語
挿絵画家ギュスターヴ・ドレの絵で綴る十字軍の絵物語。十字軍遠征の歴史を俯瞰して眺めることができる十字軍の入門書です。
19世紀の歴史作家フランソワ・ミショーが書いた「十字軍の歴史」。それに挿絵を描いたギュスターヴ・ドレ。
その挿絵98点を抜き出して、左右見開き2ページの左全面にドレの挿絵、右ページ上段に絵の題材になった地域の地図、下段は「ローマ人の物語」で有名な塩野七生先生の簡潔な解説文という構成です。
■絵で見る十字軍物語 塩野七生/著(新潮社)
ドレの挿絵は木口(こぐち)木版画になります。原画はペンで描かれ、濃淡は薄いインクで表現、それを元に陰影を彫版師が彫刻し、大量に印刷する。
精巧な木版画、原画一人での量産体制とも最高水準に到達した。当時のモノクロイラストの頂点になるかと思う。そのすぐ後にカラー印刷の時代が来て、豪華な挿し絵本の黄金期に入ってしまう。
十字軍を題材にした創作モノはいくつか見てきたけど、そのどれもが残虐的で無謀な侵略軍という描かれ方でした。そこそこ客観的なはずの本書でも酷さは変わらなかった。とりあえずピエールを何とかしないと・・言うなれば、一人のクレーマーの声にタダ乗りして身勝手な正義をかざして集まった難民集団、その数10万人。
この軍とはいえない連中の略奪の旅が十字軍の始まりとは・・しかも最初の戦闘が道中迷惑していた同じキリスト教国だなんて・・・むかしむかしの戦記物語としては良い感じの始まりですが、いまなお続くキリスト対イスラムの対立の根っこになるかと思うといたたまれない気持ちになります。
■Gustave Dore: Illustrations of the Crusades(海外サイト):ドレの挿し絵100点が載っています
ISBN-13: 9784103096320
▼目次(絵で見る十字軍物語)
※もくじなし
読者へ、塩野七生から p.3-6
絵で見る十字軍物語 「序曲」 p.7-205
カバーおよび本文内挿画:ギュスターヴ・ドレ Gustave Dore
奥付 p.207