紅の豚 絵コンテ
1920年代末、第1次世界大戦後のアドリア海。かつてイタリア空軍のエースだったマルコ=パゴット大尉が退役したのち始めた「空賊狩りの賞金稼ぎ」の物語。なぜかマルコは豚になり、ポルコ・ロッソ(紅の豚)と呼ばれている。
主人公が不細工なブタ(しかも何で豚になったのかは明かされないし意味もない)。他の男も、臭かったりひょうきんな三枚目ばかりで、若いヒーロー気取りのガキがいない。なんとも痛烈なおっさんアニメだ。「女は外見、男は中身」という古き良き時代の映画をアニメにした感じがする。
原作は月刊モデルグラフィックに連載された水彩カラー漫画「飛行艇時代」(のちに「宮崎駿の雑想ノート」に収録)。当時のインタビューで「アニメ映画としてはトトロが絶頂で、その後は惰性で作っていた。特に紅の豚は趣味丸出しで恥ずかしい」というようなことを仰っていた。でもそこが好き。本質はミリオタで少女愛好家、どうか素直になって欲しい。
■紅の豚(Wikipedia)
▲紅の豚 絵コンテの全文
となりのトトロ 絵コンテ
売れなかったらやめようとしていたアニメ制作会社を永続企業にした看板アニメ。のちに、ディズニーのミッキーマウスのように、トトロはスタジオジブリのシンボルマークになる。
長編アニメの基本は、主人公の目的や夢をかなえるべく敵(悪役・事件・災害など)と戦うことが常だった。観客にとってリアルに必然性を感じられる『敵』を登場させることが映画の良し悪しに直結する。しかしパターン化した『敵』のマンネリ、ネタ切れを感じた監督は「ヤマなし、オチなし、意味は感じてね」という中編ファンタジーをぶちあげる。元は60分、女の子を皐月とメイに分けて86分の長編にした。
絵コンテではAパート(212カット)を使って「親子が引っ越してきて、家の中を探検する」だけ。演出と映像の力によって成立しているのだけれど、およそ企画から絵コンテまで独りで仕切ることができ、ナウシカ・ラピュタの成功があったから許された冒険かとも思う。
▲となりのトトロ 絵コンテの全文
耳をすませば 絵コンテ
この映画のねらい、「この作品は、自分の青春に痛恨の悔いを残すおじさん達の、若い人々への一種の挑発である」
耳をすませば スタジオジブリ絵コンテ全集10
近藤喜文監督 /宮崎駿(脚本・絵コンテ)
この絵コンテには「耳をすませば」と同時期に制作されたCHAGE&ASKAのプロモーションフィルム「On Your Mark」のカラーイメージボード付きの絵コンテも収録されています。
原作の少女漫画は華も捻りもないごく普通な作品。もはや純文学化してしまった様な古いタイプの少女漫画だ。それをジブリのおじさん達が手を加えると鮮やかでリアリティーのあるストレートな青春物語になった。
「平成狸合戦ぽんぽこ」のラストを引き継ぐ形で都市の夜景カットで始まる。設定モデルは京王線の聖蹟桜ヶ丘周辺。原作の少女マンガではハッキリしない所を徹底して自分たちのリアルで埋めていったことがわかる。携帯もインターネットもない時代だし、茶髪もいじめも妙な教師も目に付かない。まるで田舎の中学校のような世界。「今」なら白けてしまってもう描けないだろう。
▲耳をすませば 絵コンテの全文
風の谷のナウシカ 絵コンテ
スタジオジブリは「風の谷のナウシカ」を製作するために作られた会社だった。また原作の漫画版「風の谷のナウシカ」も長編アニメを作りたかったら原作があった方が説得しやすいという理由で、漫画家はあきらめた監督が描いている。始まりからして複雑なこの作品はいろいろな角度から見ることが出来て面白い。
「風の谷のナウシカ」のヒットで世間に「宮崎駿」の名が知れ渡る。でも製作段階では立ち上げたばかりの製作会社で、作品は異世界SFモノという全てのシーンに説明が必要なほどの内容で、絵コンテはきわめて丁寧に描かれている。
絵コンテをみると冒頭から「腐海」という概念を説明するために膨大なシーンを割いています。いくらファンタジー作品が多くなっても世界観の演出は御座なりしてはいけないということが解る。一方、1本の娯楽映画に収めるため「ドルク」や「クシャナの扱い」など漫画版を知っていると悲しくなるような削除もしている。
しかしその結果、「ナウシカ」というキャラが異様に際だち「自然との調和」「環境保護」「エコブーム」などなどと時代の風に乗って頂点を極めてしまう。ここはだれも計算していない相乗効果で、娯楽映画を超えた部分でもある。
▲風の谷のナウシカ 絵コンテの全文
ルパン三世 カリオストロの城 絵コンテ
1979年公開の劇場映画で、スタジオジブリを設立し「風の谷のナウシカ」を製作する前の作品。今では考えられないけど興行的には失敗で売れなかった。監督がナウシカで評価が高まるまで干されるほどで、良いものを作れば自然に売れるなんてのはウソで、評価の良し悪しが出る程度には観てもらう必要がある。
ルパン三世 カリオストロの城 スタジオジブリ絵コンテ全集第2期1
監督 宮崎駿/原作 モンキー・パンチ/製作・著作 トムス・エンタテインメント/1979年12月15日(土)公開
この頃の絵コンテは今のへろへろな線とは違い、まだしっかりした線で描かれている。ABCDの各パートが起承転結にバランスよく分かれているのも面白い。
一方、絵コンテ上で没カットがいくつかある。ルパンが地下に落とされてすぐ、ロリコン伯爵にせまられるクラリスの微妙な演技の変更をしている。これは性格を清楚で気丈に振舞う女性から、やっぱり少女としての感情が出てしまうところをプラスしている変更だとおもう。
▲ルパン三世 カリオストロの城 絵コンテの全文
スタジオジブリ 絵コンテ全集
「風の谷のナウシカ」から始まるスタジオジブリ作品の絵コンテ集。アニメの設計図になる絵コンテを完全収録し発行し続ける事業は貴重なことです。
宮崎駿
578ページ 本体価格2,600円
ISBN 4198613761
◆風の谷のナウシカ 絵コンテ詳細
宮崎駿
702ページ 本体価格2,850円
ISBN 419861377X
◆天空の城ラピュタ 絵コンテ詳細
宮崎駿
434ページ 本体価格2,400円
ISBN 4198613788
◆となりのトトロ 絵コンテ詳細
高畑勲
514ページ 本体価格2,600円
ISBN 4198613796
宮崎駿
562ページ 本体価格2,600円
ISBN 4198613958
高畑勲
602ページ 本体価格2,850円
ISBN 4198614075
宮崎駿
482ページ 本体価格2,400円
ISBN 4198614245
◆紅の豚 絵コンテ詳細
望月智充
586ページ 本体価格2,600円
ISBN 4198614385
高畑勲
738ページ 本体価格2,850円
ISBN 4198614512
(On Your Mark)
宮崎駿/近藤喜文監督作品
534ページ 本体価格2,700円
ISBN 4198614636
◆耳をすませば 絵コンテ詳細
宮崎駿
622ページ 本体価格2,800円
ISBN 419861475X
◆もののけ姫 絵コンテ詳細
ホーホケキョとなりの山田くん スタジオジブリ絵コンテ全集12
高畑勲
662ページ 本体価格2,850円
ISBN 4198614873
宮崎駿
650ページ 本体価格2,800円
ISBN 4198614393
◆千と千尋の神隠し 絵コンテ詳細
宮崎駿
648ページ 本体価格2,850円
ISBN 4198619549
宮崎吾朗 /山下明彦
437ページ 本体価格2,700円
ISBN 419862190X
◆ゲド戦記 絵コンテ詳細
宮崎駿
552ページ 本体価格3,400円
ISBN 978-4198625719
◆崖の上のポニョ 絵コンテ詳細
米林宏昌
464ページ 本体価格2,800円
ISBN 978-4198629939
◆借りぐらしのアリエッティ 絵コンテ詳細
監督・絵コンテ:宮崎吾朗 / 脚本:宮崎駿・丹羽圭子
409ページ 本体価格2,800円
ISBN 978-4198632090
◆コクリコ坂から 絵コンテ詳細
宮崎駿
641ページ 本体価格3,500円
ISBN 978-4198636388
◆風立ちぬ 絵コンテ詳細
高畑 勲
888ページ 本体価格3,600円
ISBN 978-4198637118
■かぐや姫の物語 スタジオジブリ絵コンテ全集20(otaku.com)
米林宏昌
500ページ 本体価格2,900円
ISBN 978-4198638351
■思い出のマーニー: スタジオジブリ絵コンテ全集21(otaku.com)
▼第Ⅱ期
高畑勲・宮崎駿の二人がジブリ以前に手がけた作品の絵コンテ集
ルパン三世 カリオストロの城 スタジオジブリ絵コンテ全集第2期1
宮崎駿
586ページ 本体価格3,000円
ISBN 4198616663
◆ルパン三世 カリオストロの城 絵コンテ詳細
ルパン三世 死の翼アルバトロス・さらば愛しきルパンよ スタジオジブリ絵コンテ全集第2期2
宮崎駿
296ページ 本体価格2,700円
ISBN 4198616671
◆ルパン三世 死の翼アルバトロス・さらば愛しきルパンよ 絵コンテ詳細
▲スタジオジブリ 絵コンテ全集の全文
ブラックマジックM66絵コンテ集
士郎正宗の初期の漫画「ブラックマジック」の一編を1987年にアニメ化した。士郎正宗自身が絵コンテを描いた作品です。
アニメの絵コンテというより漫画のネームのような印象をうける。とにかく書き込みが多い。初期の士郎正宗のアタリや鉛筆線画をたくさん見れる。絵柄の進歩というか変化を探るのに良い資料になります。
あとがきにもありますが、絵コンテとしては膨大な労力を使ったわりには失敗だった。TVアニメなら2話分、ドラマなら1本分、アメリカのアクション刑事ドラマ風という単純明快な基本があったにもかかわらず、細部にこだわり過ぎてテンポが悪くなってしまった。初めてのアニメ制作でいきなり絵コンテを描くというのは天才にして不可能と結論づけている。
にしても当時、徳間書店がコレクター向けに発行した「風の谷のナウシカ」の絵コンテ(文庫版)を教科書に、いきなり初絵コンテ→アニメ(OVA)化してそこそこの評価を得られる作品にするとは、やっぱり尋常ならざる才能だ。
▲ブラックマジックM66絵コンテ集の全文
時をかける少女 絵コンテ 細田守
劇場用アニメ「時をかける少女」(2006年夏公開)の絵コンテ集。
アニメの設計図ともいえる絵コンテですが、単行本として出版されること自体めずらしい。キッチリ出しているのはジブリの絵コンテ全集くらい。つまり、「時をかける少女」の絵コンテは単品で売れるほど完成度の高い絵コンテで、整理された線に、きっちり描き込まれた画面はきれいです。
■「時をかける少女 絵コンテ 細田守」内容を紹介(ANIMESTYLE ARCHIVE)
▲時をかける少女 絵コンテ 細田守の全文
ゲド戦記 絵コンテ
宮崎駿監督の息子、宮崎吾朗初監督作品、映画「ゲド戦記」の絵コンテです。
2006年の邦画興行収入1位を記録(約76.5億円)という数字をみれば、新人監督としては成功している。ただ、ジブリの目標は100億だったし、年々深刻化する宮崎駿監督の後継者を育てるという意味では遠かった。
付録の冊子によると、原作者から宮崎駿監督に制作依頼があり、ハウルで忙しかったため制作準備室みたいなものが作られ、その中心的役割を積極的にしたのが宮崎吾朗氏で、結果、絵コンテ制作そして監督に志願している。
初絵コンテなため、1カットずつ貼りだして組み替えながらストーリーを練るピクサー方式で、山下明彦氏と共同作業で組み立て描いています。にしても、シュナの旅を参考にしているとはいえ、吾朗監督の絵柄は父親に似ている。並んでいるジブリの絵コンテ全集として手に取っても違和感がない。それだけに天才宮崎駿監督との差を研究するのにもってこいの資料になります。
▲ゲド戦記 絵コンテの全文
ルパン三世 死の翼アルバトロス・さらば愛しきルパンよ 絵コンテ
ルパン三世のテレビシリーズ第145話『死の翼アルバトロス』第155話『さらば愛しきルパンよ』(最終話)の絵コンテです。宮崎駿が照樹務(テレコム)名で脚本・絵コンテ・演出を担当した。
ルパン三世 死の翼アルバトロス・さらば愛しきルパンよ スタジオジブリ絵コンテ全集第2期2
「カリオストロの城」の後で、ルパン三世TV第2シリーズに不満を持った宮崎駿が、カリオストロの製作メンバーで臨んだ異色のTVアニメ。当時、子どもで画面に釘付けになりつつも『ルパンじゃな~い』という感覚になったのを今でも憶えています。
絵コンテの手本として優れています。AパートBパートだけの30分アニメ。今のように悟りを開いたような2時間の劇場用アニメ絵コンテよりは解りやすい。不二子ちゃんをひんむいたり、空中戦やら戦車での市街戦やらの派手なシーンを多用して惹きつけながら、『ルパン』というキャラを前面に出すシーンがほとんどなく、純粋にアニメーション・絵で繋いでいる手法は見事です。